研究課題/領域番号 |
23560526
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宇野 洋二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10203572)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 装着型ロボット / 下肢麻痺患者 / 歩行補助 / 知能ロボティクス / 転倒予防 / 歩行器 |
研究概要 |
下肢麻痺患者が補助ロボットを装着して、平地だけでなく不整地や傾斜面においても安定に歩行できるようにセンサ・制御系の開発を進めた。当年度では、システム全体の基本的な構成を決定し試作を行った。さらに、転倒予防に向けた補助ロボットの制御方法を検討した。その結果、以下の研究成果を得た。(1)歩行器の設計:歩行補助ロボットと歩行器とが一体になった力学系を考えて、歩行器の構造を決定した。具体的には、3軸角度センサ、加速度センサ、圧力センサとマイクロプロセッサを搭載した歩行器を設計し、システムを改良した。(2)段差/斜面における歩行パターンの決定と補助トルクの制御方法の検討:歩行器に搭載されたセンサ情報と足底圧情報から、ユーザの意図する歩行パターンを推定するアルゴリズムを開発した。これによって段差歩行や斜面歩行における歩幅、遊脚の高さ等の予測ができるようになった。また、段差のある箇所で、予測した歩幅に従って段差上面に載せる足の位置を決定し、右脚、左脚の歩行パターンを生成する方法を考案した。(3)転倒条件の検討と転倒予防システムの開発:歩行において、両脚支持期から片脚を持ち上げて段差上面に足を載せる際に、後方に転倒しないような歩行パターンを生成しなければならない。力学的な解析によって、平地面での歩行と同様に、離脚時の重心速度が重心位置と固有振動数の積よりも大きければ、後方へ転倒することなく重心は前方向へと推移することを見出した。これが転倒回避の条件となる。(4)足底圧計測システムの試作:歩行補助ロボットの足底に小型力覚センサをアルミ板で挟み込み、さらに計測回路も組み込んだ足底圧計測システムを試作した。このシステムを利用して傾斜面上における姿勢維持の予備実験を行ったところ、足底の圧力中心と床反力に従って足首角度を調整することによって、直立姿勢が保たれることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度当初に計画した3つの研究課題はすべて達成された。さらに、平成24年度の研究課題であった足底圧計測システムも試作することができた。これらの研究開発によって、歩行補助ロボットの転倒予防に向けた基本的なセンサ・制御システムは構築できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に構築した歩行補助ロボットのセンサ・制御システムをベースにして、足底圧計測装置の改良とゼロモーメントポイント(ZMP)に基づく制御法を開発するとともに、システムの動作テストも開始する。 歩行中の足底圧を計測することは、脚が地面に着くタイミングや離れるタイミングを検出する上で必須であるし、ロボットと身体を合わせた系の姿勢安定性を推定する上でポイントとなる。そのために、歩行中の足底圧情報からZMPを算出し、ZMPが支持脚足底の内部に存在するように遊脚のスウィング動作のタイミングを調節することによって、前方への体重移動を行う制御法を考案する。次に、歩行補助システムの動作テストを行う。安全性に留意して、健常な被験者に補助ロボットを装着して、歩行器を使いながら平地面、および段差面で歩行してもらい、身体各部の運動を3次元位置計測装置(既存設備)で計測する。評価のポイントとして、第一に下肢麻痺患者の運動軌道と補助ロボットの運動軌道とが時空間的にどの程度協調しているかシナジー解析を通じてチェックする。第二に転倒リスクの高い歩行に至ったときにロボットが自律的に離脚タイミングを制御して後方への転倒を回避することを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
歩行補助ロボットのセンサ・制御系を改良・発展させるために各種電子回路部品を購入する。特に、ロボット足底に組み込む薄型の圧センサは破損しやすいので、予備を含めて数個導入する予定である。 本研究によって得られた研究成果の情報発信のために、国内外で積極的に研究発表を行うとともに身体の運動制御に関する最新の研究動向を調査するための旅費も計上する。また、研究成果を論文として刊行するための投稿料と別刷り代も計上する。
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