下肢麻痺患者が歩行補助ロボットを装着して、平地だけでなく不整地や傾斜面、段差面においても安定に歩行できるようなシステムの開発を進めた。今年度は、前年度までに作り上げた歩行補助ロボットのセンサ・制御系の改良と動作テストを行い、段差面での安定した歩行動作と歩行速度の向上を実現した。具体的な研究成果は以下の通りである。 (1) 転倒することなく段差を乗り越えることができるように、段差を精度よく検出するとともに、離脚時の重心位置と速度の制約条件を考慮して安定な動作パターンを生成する方法を考案した。健常な被験者に補助ロボットを装着し、段差面で歩行器を使いながらの歩行テストを行った。その結果、6cm程度の段差を安定して上がり、また降りることができることを確認した。 (2) 傾斜面で転倒することなく立位の姿勢が維持できるように、足底の圧力中心と床反力の変化に応じて足首関節を調整する制御系を開発した。動作テストを行った結果、ユーザが傾斜面上で安定した直立姿勢を維持できること、また足首関節の調整により腕にかかる力が大幅に軽減されることを確認した。 (3) 歩行補助ロボットの歩行速度の向上のために、歩行パターンの生成方法を改善した。特に、関節の可動域やモータの速度限界を考慮して関節空間上で運動軌道を決定した。歩行パラメータの決定に倒立振子モデルを用いて後方転倒を予防し、かつオンライン最適化により、つまずきやモータの速度限界を超過しない動作の生成法を考案した。これにより従来の歩行速度0.65km/hの約2倍の1.31km/hの歩行を達成した。
|