研究課題/領域番号 |
23560537
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
小口 俊樹 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50295474)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 制御理論 / むだ時間 / 複雑系 / 同期 / ネットワーク系 |
研究概要 |
本研究は,多数のサブシステムからなる大規模遅延ネットワークシステムの同期制御問題を考え,従来のシステム間の結合強度と遅延時間に関する同期条件の導出だけでなく,ネットワーク構造を含めた同期ネットワークの設計法を導出することである.特に,本年度においては,設定した3つのサブテーマのうち(a)構造設計を含む非線形結合ネットワーク系の同期解析・制御手法の開発を行うこととしている.本研究においては,ネットワーク構造を表すグラフラプラシアンの固有値と,結合強度と遅延時間からなる同期条件との関係に基づく解析から,二つのサブシステムを遅延結合により双方向結合した場合の同期条件から,任意のネットワークの同期条件を推定可能であることを明らかにしているが,この解析をさらに進め,ネットワークの一部が同期現象を生じる部分同期現象の解析にも拡張できることを明らかにした.さらに,各サブシステムが強準受動性を有しない場合,結合により各システムが発散する場合があるが,本研究ではLur'e系を対象にして,そのような発散現象の発生も同様の解析手法で推定可能であることを明らかにした. 今年度はさらに,上述の同期条件の推定法を用いて,ネットワークの直積構造とグラフラプラシアンの固有値の性質に着目し,与えられた同期条件の下で同期を発生するネットワークの構造設計法を明らかにした.一般に,結合されるサブシステム数が増加すると,ネットワーク同期のために許容される最大遅延時間は短くなる傾向があるが,本提案手法を用いることにより,サブシステム数が増加した場合にも,許容される最大遅延時間を下げることなく同期が可能となるネットワークの構成法を示した. これらの解析および設計法は数値シミュレーションにより妥当性を検証しており,国内会議において一部発表を行った.また,国際会議で論文が採択されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は3ヵ年の研究テーマの下に設定されたサブテーマのうち(a)構造設計を含む非線形結合ネットワーク系の同期解析・制御手法の開発,が主たるテーマであり,その下に置かれた検討事項について,概ね順調に成果を得ている.特に,申請者らの同期条件推定法を拡張させて,同期ネットワークの構造設計法を得ることができた.また,異なる遅延時間を有する遅延結合ネットワークの同期問題についても検討を行い,一定の結果を得ている.また,24年度に予定をしていた群移動ロボットのインターネットを用いた情報結合による遠隔同期実験に一部取り組み,実験環境の整備及び海外との試行実験を行った.したがって,全体としてほぼ計画通りに遂行されており,順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
24年度においては,本年度に得たサブネットの結合による同期に関する結果を,群移動ロボットを用いた同期問題に応用する.このことについては,人工的な一定遅延時間を入れた環境下における実験を既に終えており,またインターネットを用いた遠隔同期実験に関する環境整備及び試験実験はすでに終えている. さらに,本年度明らかにした同期ネットワークの構成法の妥当性と有効性を,より大規模なネットワークの構成に適用することで検討する.加えて,二つ目のサブテーマである(b)外部入力による遅延結合ネットワークシステムの同期制御手法の開発を行う.これは,強制同期現象を遅延結合ネットワーク系に拡張する試みである.ここでは,完全グラフ構造の遅延結合ネットワークを対象に同期条件を導出したのち,ネットワークを一般化する.
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度においては,水害等による機器納入の遅れが予想され,さらに特に解析手法およびネットワーク構造設計法の理論に傾注したため,検証に用いた規模のシステムの数値シミュレーションは,既存の設備を用いることで対応し,計算機の購入を次年度に延ばすこととした.24年度においては,より大規模なシステムを対象とした数値シミュレーションを行うため,本年度で当初計算機購入に予定していた金額をそのまま今年度に繰り越し,計算機の購入に充当する.なお,このことによる研究計画の遅延は生じていない.
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