研究課題/領域番号 |
23560538
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小西 啓治 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90259911)
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研究分担者 |
原 尚之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10508386)
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キーワード | 複雑系 / カオス / 制御工学 / システム工学 / 非線形科学 |
研究概要 |
複数の要素が相互作用を受ける複雑なネットワークシステムのダイナミクスの解析は,様々な応用研究の基盤的な知見を担う重要な基礎研究である.従来の研究では,非常に単純な相互作用のみが想定されていた.協調型移動ロボットなどの実システムでは,各要素の相互作用の構造が未知であったり,時々刻々と変化する.また,センサーネットワークなどでは,各要素はWWW,無線通信,物理的な相互影響により,伝達情報の遅延やパケット化は無視できない.これら2つの要因がネットワークのダイナミクスに与える影響は,未解決のままである. 本年度は,以下のような成果を得ることができた:(1) 伝送遅延が時間共に変化する2つの結合発振回路に生じる振動停止現象の実験的検証,(2) 遅延を伴うパケット化された情報によって相互作用を受ける結合発振器に生じる振動停止現象の理論的解析,(3) 非対称な伝送遅延が時間共に変化する結合系に生じる振動停止現象の理論的解析と回路実験による検証,(4) 伝送遅延が時間と共に変化する大規模ネットワークに生じる安定化現象の理論的解析,(5) 動的結合ネットワークに生じる振動停止現象を誘発する結合パラメータの設計,(6) トポロジーが時間と共に変化するネットワークに生じる振動停止現象の理論的解析,(7) 複数遅延結合によって相互作用を受ける遅延発振器に誘発される振動停止現象の設計.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,相互作用に要する遅延時間が時間と共に変化する2つの発振器に生じる振動停止現象の実験的検証結果をまとめ上げ,国際学術論文誌で発表することができた.また,遅延を伴うパケット化された情報によって誘発される振動停止現象の存在を指摘した結果も,同様に国際学術論文誌に採択された.このように,質の高い成果が順調に得られており,本研究の進捗状況は極めて良好である.さらに,遅延発振器に関する最新の成果も,米国物理学会の採択が決まっている.また,本年度は、国内学会・国際会議で多くの成果を精力的に発表することができた.次年度は,これらをまとめ上げた成果が,国際学術論文誌に数多く投稿できるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は以下の項目を中心に実施する. (1) 非常に弱い拡散結合に伴うカオス発振器の安定周期軌道への収束現象の実験による検証結果をまとめ上げ,学術論文として発表する.(2) 伝送遅延が時間と共に変化するネットワークに生じる安定化現象とネットワークトポロジーの関係の調査結果をまとめ上げ,学術論文として発表する.(3) ネットワークトポロジーが時間と共に変化するネットワークに生じる振動停止現象の調査結果をまとめ上げ,学術論文として発表する.(4) 本研究で得られた知見をカオス同期現象の安定性解析に応用する.
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次年度の研究費の使用計画 |
一昨年度は学内で責任のある役職に就いており,研究実施にあてる時間が当初の計画よりも少なく,研究費は当初の予定より少ないものとなった.しかし,今年度は,責任のある役職に就いていなかったため,予定通りの研究を遂行し,ほぼ当初の計画通りの研究費を使用した.次年度も,今年度とほぼ同じ状況であるため,より積極的に研究を発展させ,研究成果の発表も活発に行いたいと考えている.特に,研究成果を着実に学術論文誌へ発表していく.そのため,次年度は当初の計画通りの予算を使用する予定である.
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