本研究の大きな目的は,相互に影響を与える複数の要素から構成されるネットワークシステムのダイナミクスを解析し,複雑系科学分野だけでなくシステム制御理論の視点から考察することである.特に,工学的な応用研究への発展を意識しつつ,新たな展開も考慮している. 最終年度は,以下のような成果を得ることができた:(1) 複数の遅延発振器を遅延結合したネットワークシステムに振動停止現象を誘発させる結合方式の設計; (2) 複数の負荷や電源から構成されるDCマイクログリッドシステムの基本回路の解析と制御方法を提案; (3) 時変遅延を伴う結合が空間的に非一様なネットワークシステムに生じる振動停止現象の解析; (4) 結合遅延に依存しないカオス同期ネットワークシステムの設計; (5) 結合ネットワークの同期現象を活用した小型ロボットの分散制御; (6) 高次元発振器から構成されるネットワークシステムに振動停止現象を誘発させる結合方式の設計. 本研究では,研究期間全体を通じて,当初の目的であった振動停止現象の調査・研究に,ロバスト制御理論の各種ツールを活用し,多くの成果を得ることができた.また,この成果を核としたサブ研究テーマが次々と生まれ,工学的な応用を視野に入れて大きく展開されつつある.
|