研究課題/領域番号 |
23560542
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
阿部 直人 明治大学, 理工学部, 教授 (10202673)
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研究分担者 |
市原 裕之 明治大学, 理工学部, 講師 (70312072)
松岡 太一 明治大学, 理工学部, 講師 (80360189)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 制御システム / 制振制御 / セミアクティブ制御 / 動吸振器 / ダンパ |
研究概要 |
研究目的として以下の4点をあげている。(1)セミアクティブ動吸振器に適したダンパの開発・制御 (2)周波数に基づいた可変剛性切換制御 (3)多層構造物における構造物の高次モードを抑制するセミアクティブ切換制振制御 (4)周波数に基づく切換え則の理論的検討研究分担者はダンパに関する研究を行い,円弧型制振ばねダンパおよび慣性を変化させるMRダンパの開発を行った。セミアクティブ制振制御にMRダンパは有効なダンパであるが,減衰係数を所望の値に定めることが未だ難しい。(研究目的(1))研究代表者は周波数に基づいた可変剛性切換制御の研究成果を得た。円錐ばねを組み合わせて,構造物の周波数に応じて予圧縮力を変化させることで剛性を変化させ,制振効果を高めた。シミュレーション結果は非常に良好で,FFT解析結果は理論的な結果とほぼ一致した。しかし,実験結果自体は良好ではあるが,FFT解析結果を詳細に見ると,まだ改善の余地がある。予圧縮を行うために0.2秒ほどかかることと,円錐ばねの非線形特性がまだ少なかったことが原因と考えられる。基本的な研究成果は十分に得られた。(研究目的(2))また,二層構造物において,頭頂部の可変剛性および可変減衰動吸振器によって,1次モードおよび2次モードを周波数に応じて切り換える制振制御を達成できた。ここではエアダンパの空気の流出量切り換えるために,高速に切り換えることに成功した。所望のエアダンパを得られない場合の対処が今後必要となる。(研究目的(3))研究分担者および代表者は理論的な切り換え則を検討し,可能性を見いだしつつある。エアダンパが切り換え制御に適していることから,量子化誤差を軽減させることも合わせて検討している。(研究目的(4))
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的として以下の4点をあげている。(1)セミアクティブ動吸振器に適したダンパの開発・制御 (2)周波数に基づいた可変剛性切換制御 (3)多層構造物における構造物の高次モードを抑制するセミアクティブ切換制振制御 (4)周波数に基づく切換え則の理論的検討【研究実績の概要】に示したように研究目的(1)については,2,3割の達成度だが,エアダンパが他の目的に有効になっているので,それほど遅れていないと判断する。研究目的(2)はほぼ達成できているが,論文にするためにはもう少しつめる必要がある。研究目的(3)については2層構造物で達成できている。ただし,これを論文としたときに採択されるかどうかは別問題である。研究目的(4)はまだ始まったばかりである。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的(1)「セミアクティブ動吸振器に適したダンパの開発・制御」はMRダンパの可能性をもう少し検討することと,複数のエアダンパを用いて,所望のばね係数と減衰係数を達成できるように検討を進める。研究目的(2)「周波数に基づいた可変剛性切換制御」は非線形ばねから所望のばね係数を得られるように円錐ばねの形状をさらに検討することと,あらたな可変剛性を達成できる機構も併せて検討する。メカニカルな可変剛性ばねの場合には,切り換えに時間がかかる問題が生じた。サーボモータではなく,エアピストンのように高速なものを導入していく。研究目的(3)「多層構造物における構造物の高次モードを抑制するセミアクティブ切換制振制御」ではセミアクティブ制御の限界を評価できれば十分な結果と言える。現在はエアダンパの性能に見合った負荷質量を用いているが,負荷質量が与えられたときにエアダンパを複数用いるなどして対処できるように検討する。研究目的(4)「周波数に基づく切換え則の理論的検討」はいくつかのアプローチが考えられる。現在最も有力で簡便な切換え則は,動吸振器の負荷質量をアクティブに制御できると仮定し,制御理論を用いて制御則を導き,その動きにできるだけ近づけるような剛性と減衰を選ぶようなセミアクティブ制御を考えている。剛性と減衰は連続的に変えられない場合の対処(量子化誤差の軽減)が必要になると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費はほぼ申請通りの支出を考えている。設備備品費としては,超低周波数振動計を計上している。積分動作を内蔵している高性能のサーボ型加速度計によって,実際に即した計測を行う。その他は成果発表のための旅費,論文別刷り代,エアダンパや電子部品といった消耗品である。申請時よりも交付予定額は減額されたが,大きな不足には至らない予定だが,設備備品費で2台計上している超低周波数振動計が場合によっては1台になってしまうかもしれない。仮に1台であった場合は,研究分担者が保有しているほぼ同性能の加速度計で研究は進めることができると考えている。
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