研究課題/領域番号 |
23560545
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研究機関 | 舞鶴工業高等専門学校 |
研究代表者 |
川田 昌克 舞鶴工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (90311042)
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研究分担者 |
市原 裕之 明治大学, 理工学部, 講師 (70312072)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 二乗和多項式 / ディスクリプタ表現 / 線形行列不等式 / ゲインスケジューリング制御 / 数値最適化 |
研究概要 |
平成 23 年度は,主として,二乗和多項式に基づく GS(ゲインスケジューリング)制御系設計法の有効性を検証するため,アーム型倒立振子への応用を検討した. アーム型倒立振子は,アームを駆動することによりその先端に取り付けられた振子の倒立姿勢を維持することを目的とした実験装置であるが,アームの角度に応じて,振子に伝わる力が非線形的に変化するため,その制御は困難である.そこで,アーム角度に関する非線形性を考慮した LPV(線形パラメータ変動)モデルを導出し,複数の設計仕様を満足させるための条件を PDLMI(パラメータ依存線形行列不等式)で記述した. PDLMI の保守性の低い数値解を得ることは,困難であることが知られているが,本研究では,この問題に対処するため,二乗和多項式に基づく方法を利用することを検討した.この方法は保守性を低くできることが期待される反面,計算量が多いので,多項式の選び方に工夫を施すことで,計算量の軽減を図った.設計された GS コントローラの有効性は,実用的な非線形制御法として知られている SDRE(状態依存リカッチ方程式)法と比較した実機実験により検証した.その結果,制御性能を厳密な意味では保証できていない SDRE 法と比べて,制御性能の向上が確認できた. つぎに,パラメータの変動領域の選び方を検討した.従来,二乗和多項式に基づく方法では,変動領域を箱型に選ぶことが多かった.しかし,実際のパラメータの軌跡との整合性を考えると,箱型が保守性が高いものである場合も少なくない.そこで,パラメータの変動領域をスーパー楕円領域や二次曲線領域に選ぶことを提案した.また,数値例により従来法と比べて保守性が軽減できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検証用実験装置についてであるが,数値計算ソフトウェア MATLAB/Simulink や制御用インタフェースボードに関連した周辺設備等を Windows Xp 対応のものから Windows 7 対応のものに更新した.また,PDLMI の数値解を得るために必要な計算機パワーをもつ 64bit OS 搭載のパソコンを導入し,実験機の周辺環境を整えた.実験装置自体については,新たに車輪型倒立振子とリモート駆動型アクロボットを製作した.車輪型倒立振子は,前後方向のサーボ制御を実現することができた.一方,同時に製作を進めていたリモート駆動型アクロボットについては,倒立状態を保つ際にチャタリングが生じるため,今後,改良が必要である. 二乗和多項式による PDLMI の数値解法の検討については,多項式の選び方に工夫を施すことで,計算量の軽減を図り,実用的な時間でコントローラ設計することができるようになった.その有効性は,SDRE 法との比較により実機実験で検証することができた.また,パラメータ変動領域を矩形ではなく,曲線で囲まれた領域とすることで,PDLMI の数値解の保守性を低くすることができることがわかった. 一方,行列拡大による PDLMI の数値解法の検討についてであるが,冗長なディスクリプタ表現を経由することで出力フィードバックコントローラの設計方法を検討する予定であったが,これまでのところ,十分には検討できていない. 研究成果の発信については,LMI の求解で利用する数値計算ソフトウェアの使用方法や二乗和多項式について,システム制御情報学会の学会誌で特集号を企画した.また,これと連動して,web 上でもプログラムソースファイルを公開した.
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今後の研究の推進方策 |
平成 24 年度は,二乗和多項式による PDLMI の数値解法において,パラメータ変動領域を曲線で囲まれた領域とすることの有効性を,倒立振子等の劣駆動システムへ応用した実機実験により検証する.そのために,前年度に整備した新しい周辺環境を利用して,劣駆動システムのモデリング,コントローラ設計を行い,従来法との比較検証を行う. 実験装置の製作に関しては,車輪型倒立振子の改良とシーソー型倒立振子の製作を行う.車輪型倒立振子については,平成 23 年度までに,前後方向のサーボ制御が実現できているが,平成 24 年度は実験装置を改良し,旋回方向も駆動できるようにする. 理論面では,ディスクリプタ表現や伸張型 LMI といった「行列拡大法」と「二乗和多項式による方法」を融合することにより,PDLMI の数値解の保守性をどの程度,軽減できるかを検討し,実用的な新しい GS 制御系設計法の確立を目指す.同時に,出力フィードバック制御系や離散時間制御系への拡張も検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験装置の改良や製作に伴い,モータ,モータドライバ,電源等の電気部品やギア,軸受け等の機械部品を購入する.また,システム解析やコントローラ設計に使用するパソコンの購入,数値計算ソフトウェアのバージョンアップを行う. 年に 2 回程度,お互いの研究機関を訪問し,研究打ち合わせを行う.また,得られた成果を計測自動制御学会主催の制御部門大会や制御理論シンポジウムで発表するために,国内旅費として経費を使用する.IEEE (The Institute of Electrical and Electronic Engineers) の国際会議で研究発表を行うと共に,国外の研究動向を調査するために,外国旅費として経費を使用する.同時に,研究成果がまとまった段階で,計測自動制御学会論文集やシステム制御情報学会誌などに投稿し,掲載が決まれば,論文掲載料として経費を使用する.
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