研究課題/領域番号 |
23560545
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研究機関 | 舞鶴工業高等専門学校 |
研究代表者 |
川田 昌克 舞鶴工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (90311042)
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研究分担者 |
市原 裕之 明治大学, 理工学部, 講師 (70312072)
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キーワード | 二乗和多項式 / ディスクリプタ表現 / 行列不等式 / ゲインスケジューリング制御 / 数値最適化 |
研究概要 |
研究代表者の川田は,提案法(二乗和多項式に基づいた線形パラメータ変動 (LPV) 系に対するゲインスケジューリング (GS) 制御系設計法)の有効性を検証するために,ソフトウェアやインタフェースの実験環境を整えるとともに,各種の倒立振子の製作や改良を行った.製作した倒立振子実験装置の構成やモデリングの方法については,システム制御情報学会の学会誌における特集号「初学者のための図解でわかる制御工学」で解説した.また,LEGO MINDSTORMS NXT を利用して回転型倒立振子を製作することを検討し,線形行列不等式 (LMI) に基づくロバスト制御や量子化制御,サンプル値制御などといった様々なアドバンストな制御手法の有効性検証に利用可能であることを確認した.さらに,提案法と比較するための設計法として,メタヒューリスティック手法のなかで代表的な粒子群最適化 (PSO) や差分進化 (DE) を利用した GS コントローラの設計を検討した.特に,DEを利用した設計法では,解の収束性や一意性の観点から実用的な結果が得られるが,提案法の方がよい結果が得られることがわかった. 一方,研究分担者の市原は,非線形系をLPV系としてモデル化し,二乗和多項式を利用した安定解析手法に基づいて,もとの非線形系の吸収領域を推定することを検討した.そこでは,LPV 系の安定解析結果より得られるリアプノフ関数のレベル集合をパラメータ領域と接するまで最大化することで推定領域を得た.また,リアプノフ関数が大域的に単調増加であれば Real N-satz で判定し,局所的に単調増加であれば Stengle's P-satz で判定すればよいことを示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請研究では,非線形システムに対する制御性能の向上を目指し,パラメータ依存線形行列不等式 (PDLMI) に基づく実用的なゲインスケジューリング (GS) 制御の設計を検討してきた. 二乗和多項式による PDLMI の数値解法の検討については,パラメータ変動領域を一般に用いられている箱型以外に選ぶことで,その数値解の保守性を低くすることができることがわかった.さらに,行列拡大との組み合わせで数値解の保守性や計算時間を軽減できると考えていたが,予想していたほどの効果は表れなかった.これは,二乗和多項式による方法が強力なツールであり,これ以上の改善が困難であったためだと考えられる.そこで,メタヒューリスティックな手法を利用した GS 制御系設計法,二乗和多項式により非線形系の吸収領域を推定することによる GS 制御系設計法について,現在,検討を進めている. 検証用実験装置の製作についてであるが,これまでに,いくつかの種類の倒立振子を製作または改良した.そのなかで,アーム型倒立振子については,その線形パラメータ変動 (LPV) モデルの導出や,既存の制御系設計法による制御性能の限界を確認している.また,提案する二乗和多項式に基づく GS 制御系設計法や,粒子群最適化 (PSO) や差分進化 (DE) に基づく GS 制御系設計法の有効性検証に利用している.しかし,2 軸車輪型倒立振子や難易度の高いシーソー型倒立振子については,十分な成果を得ることができていないので,今後も検討を進めていく. 研究成果の発信については,倒立振子の実験装置の概要,モデリング,各種のコントローラ設計法について,システム制御情報学会の学会誌で特集号を企画した.また,これと連動して,web 上でもプログラムソースファイルを公開した.
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今後の研究の推進方策 |
平成 25 年度は,まず,提案法の有効性を検証するための実験装置を充実させる.前年度までに制作したアーム型倒立振子については,実機実験によりゲインスケジューリング制御の有効性を検証することが可能な装置であることを確認した.しかし,前後方向と旋回方向の制御を行う2軸車輪型倒立振子に関しては,まだ,実験装置が完成していないので,今年度中に完成させたい.また,非線形性が強いとされる 2 軸ヘリコプタ実験装置の製作を行い,そのモデリングを行う.同時に,LEGO MINDSTORMS を利用して簡易的に検証できる実験装置の製作も検討する. 理論面では,まず,粒子群最適化 (PSO) や差分進化 (DE) といったメタヒューリスティックな手法により,パラメータ依存線形行列不等式 (PDLMI) を解くことなくゲインスケジューリング制御を実現する手法について検討を進めていく.そのうえで,製作した実験装置を利用して提案する手法に基づくゲインスケジューリング制御の有効性を検証する.また,二乗和多項式を利用した線形パラメータ変動 (LPV) 系の安定解析手法により非線形系の吸収領域を推定する手法を,ゲインスケジューリング制御系設計に利用することを検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験装置の改良や製作に伴い,モータ,モータドライバ,電源等の電気部品やギア,軸受け等の機械部品を購入する.また,システム解析やコントローラ設計に使用する高性能なパソコンの購入,数値計算ソフトウェアのバージョンアップを行う. 年に 2 回程度,お互いの研究機関を訪問し,研究打ち合わせを行う.また,得られた成果を計測自動制御学会制御部門主催の大会で発表するために,国内旅費として経費を使用する.IEEE (The Institute of Electrical and Electronic Engineers) 主催の国際会議で研究発表を行うと共に,国外の研究動向を調査するために,外国旅費として経費を使用する.同時に,研究成果がまとまった段階で,計測自動制御学会論文集やシステム制御情報学会論文誌などに投稿し,掲載が決まれば,論文掲載料として経費を使用する.
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