研究課題
研究代表者の川田は,製作したアーム型倒立振子のゲインスケジューリング (GS) 制御を実現するために,線形最適レギュレータに非線形項を付加することを検討した.具体的には,進化型計算で代表的な粒子群最適化 (PSO) および差分進化 (DE) により,与えられた評価関数が最小となるように,非線形項の係数を調整した.評価関数は,二種類の目標軌道を与えることで,コントローラゲインが一意に定まるように工夫した.その結果,制御工学の分野で従来,よく用いられてきた PSO と比べて,DE の方が解の収束性や一意性の観点で,実用的であることが確認できた.また,実機実験により得られた GS コントローラの有効性を実証した.同時に,川田は他の実験装置の製作にも着手した.GS コントローラの設計には至らなかったが,二軸車輪型倒立振子の製作を完了し,基本的な線形コントローラで二次元平面状の目標軌道に追従させることに成功した.今後,二軸車輪型倒立振子の GS 制御系設計も検討していく予定である.また,パラメータ依存 LMI の解を DE により探索することも検討課題である.一方,研究分担者の市原は,入力飽和を有する多項式非線形システムに対して,状態フィードバックによる制御系設計法を提案した.飽和関数をポリトープ表現とすることで,数値最適化手法で設計が可能となる.設計は2段階で最適化問題を解けばよく,繰り返しは必要ない.まず,第一段階で,行列二乗緩和を直接問題に適用する.つぎに,第二段階で,零化多項式行列を導入し,第一段階で設計した制御器の保守性を改善する.得られた方法は,入力飽和を有する線形システムに対する設計手法の多項式非線形システムへの一つの拡張となっている.数値計算で,提案した設計手法の有効性を検証することができた.
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SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration
巻: Vol.6, No.3 ページ: 186-193