研究課題/領域番号 |
23560550
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
高橋 修 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (60236263)
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研究分担者 |
前川 亮太 中央大学, 理工学部, 助教 (20455497)
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キーワード | アスファルト混合物 / 配合設計 / 空港アスファルト舗装 / 塑性流動抵抗性 / Superpave / Bailey骨材パラメータ |
研究概要 |
本研究の目的は,航空機が大型でその運行回数が多い大都市国際空港のアスファルト舗装を長寿命化させることであり,その方策として塑性流動抵抗性が優れたアスファルト混合物の配合設計法について検討している。当該年度は,耐久性を重視した骨材構造を構成するための分級骨材の配合割合を決める具体的方法について研究した。 耐久性の高いアスファルト層を構築するには,主骨材が接触しながらもそれらによる空隙を別の小さな骨材が充填するような骨材の構造が重要である。すなわち,中間サイズ,小サイズの骨材が主骨材相互の接触を阻害しないように,かつ空隙を密に充填するように骨材サイズのバランスを考慮して各骨材粒子の比率を決めることが求められる。昨年度の検討でわが国の国際空港に即した試験供試体の締固めエネルギが得られたので,本年度は主骨材である6号砕石が作り出す空隙の大きさを定量化し,それを効果的に充填する骨材サイズの関係を調べた。そして,この検討を順次小さいサイズの骨材について繰り返していった。つまり,アスファルト混合物とした場合に空港の基準を満足する骨材の組合せ条件を,骨材特性値をパラメトリックに変化させた室内実験で模索する方法によって検討を行った。 ここでの検討では,わが国を代表する東京国際空港で使用された骨材を入手し,骨材サイズと空隙サイズ,およびそれを充填する骨材サイズの相互関係を分級骨材のドライロッド締固め実験によって求めた。そして,骨材粒度を特性化する5つのBailey骨材パラメータを参考にして,これらのパラメータが配合設計時の体積特性値である空隙率,骨材間隙比,および飽和度に及ぼす影響を定量的に調査した。つまり,わが国の国際空港におけるアスファルト舗装の条件に合うBailey骨材パラメータの推奨範囲を具体的に設定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの検討により,(1)滑走路と誘導路の違いに対するアスファルト舗装の損傷形態を比較し,その実態を調査すること,および(2)国際空港での航空機タイヤ荷重に即したアスファルトコンクリート供試体の締固め仕様を策定すること,について当初の予定どおり成果が得られた。そしてこれらの成果を踏まえて,本年度は予定どおりに(3)耐久性を重視した骨材構造を構成するための分級骨材の組合せ決定法を策定すること,について検討した。東京国際空港で使用された骨材を追加入手し,粒度分布,比重,吸水率等の基本試験を実施して,Superpaveの骨材基準を満足する合成粒度を,Bailey骨材パラメータを変化させることにより,合計22種類も設計した。 その後,22種類の骨材粒度に対して,それぞれ設計アスファルト量を決定し,体積設計特性値を求めて規定値と比較するとともに,Bailey骨材パラメータと体積設計特性値の相間性について調査した。また,配合設計した22種類のアスファルト混合物すべてについて,塑性流動抵抗性を評価する試験も実施し,骨材粒度-体積設計特性値-混合物パフォーマンスの3つの因子グループを相互に比較して,相間性や主要因子について検討した。そして,これらの成果を2つの論文に取りまとめ,米国と欧州の国際ジャーナルに投稿した。そのうちの1編は採択され,ジャーナルに登載された。 さらに本年度は,塑性流動抵抗性とならんでアスファルト舗装に重要なひび割れ抵抗性についても評価した。時間の都合により,本格的な検討は次年度になるが,22種類の混合物から塑性流動抵抗性が十分に高い配合を選出し,ひび割れ抵抗性を評価するための曲げ疲労試験を実施した。そして,限られた試験条件ではあるが,配合によってひび割れ抵抗性にも差があることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度が本研究事業の最終年度となる。次年度においては,ひび割れ抵抗性を評価するための曲げ疲労試験を引き続き実施するとともに,当初の予定どおり(4)耐久性を重視したアスファルト混合物配合設計のための体積特性値,およびBailey骨材パラメータの推奨値を設定すること,について検討を行う。本年度の研究によって,十分な塑性流動抵抗性を得るために必要な主要Baileyパラメータとその推奨値を選定した。これにひび割れ抵抗性をさらに考慮して,より耐久性の高いアスファルト混合物を配合設計するための主要Baileyパラメータ,および着目すべきSuperpave特性値について具体的に選定していく。 そして,(5)以上で検討した設計要領を整理し,設計方法の妥当性を確認しつつ,第三者が使えるようなガイドラインを作成すること,についても作業を進める。これまでは東京国際空港で使用された骨材のみで検討を行ってきたが,本研究で推奨する骨材パラメータおよび体積特性値の妥当性,汎用性を確かめるために,任意の骨材に対して同じ手続き,基準値で配合設計を行い,そのアスファルト混合物の耐久性を評価する。本年度までは主に英文で国際ジャーナルに研究成果を公表してきたが,国内の実務技術者に本研究の取組みや成果をアピールするため,和文で成果を取りまとめて主要論文集に投稿する。 わが国では,Superpave設計法とBailey骨材評価法が専門技術者の間でさえ全く普及していない。これらの基礎知識を国内に広めるためにも,論文投稿に加えてインターネットの活用も取り組んで行きたい。例えば,骨材の素材データを入力し,分級骨材の配合割合を選定すると,Bailey骨材パラメータが自動的に計算されて,推奨値との比較が容易にできるようなスプレッドシートを作成し,使用方法とともにウェッブページからダウンロードできるような環境を整備していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記のとおり,次年度の検討業務としては,ひび割れ抵抗性を評価するための曲げ疲労試験の実施,および検討成果の取りまとめとその公表が主体となる。曲げ疲労試験については,既に本年度から試験を実施していることから,必要な機器類の調達は完了している。供試体を追加作製するためのアスファルトや骨材の購入が予想される。したがって,購入物品として高額のものはなく,付属機器類や消耗品レベルのものをいくつか購入する予定である。曲げ疲労試験は,供試体の作製から試験の準備,試験後のデータ整理に多くの手間と時間を要する。また,成果の取りまとめに関連して事務的作業も増えることから,短期の研究補助者を雇用する予定である。そのため,人件費・謝金が例年よりも嵩むことが見込まれる。 旅費としては,研究発表や関係者との打ち合わせのため,研究代表者および研究分担者ともに国内での旅行を複数回予定している。またこれら関係研究者の他に,当該研究事業に参画している大学院学生に対しても研究発表を予定しているので,旅行に関わる費用を旅費から支出するつもりである。 次年度は本研究事業の最終年度となることから,これまで放置しておいた試験後供試体の廃棄作業も行う。アスコンは産業廃棄物であり,リサイクルが推奨されていることから,専門の処分業者に処理を委託する。そのため,その他の費用として試験済み供試体の処分に関わる項目を挙げておく必要がある。
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