研究課題/領域番号 |
23560553
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山口 明伸 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (50305158)
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研究分担者 |
武若 耕司 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (10155054)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 電気防食 / 犠牲陽極方式 / 金属溶射 / 溶射金属 / 復極量 / 防食電流 / 防食効果 / 鉄筋腐食 |
研究概要 |
電気防食工法には、「外部電源方式」と「犠牲陽極方式」の2種類がある。「犠牲陽極方式」は、陽極材金属の反応により防食電流を供給するため、電源装置が不要であり、施工が簡便などの利点がある。しかし、本方式では、防食電流の調節ができないため、長期間安定した防食効果を発揮するための陽極金属の種類や施工方法さらに施工方法について十分に検討する必要がある。本研究では、数種類の溶射金属を用いて、その防食効果に与える環境要因の影響を検討し、表面処理方法の違いが長期的な防食効果の安定性に与える影響を把握するための長期暴露試験を実施している。これまでの結果から得られた主な成果を以下に示す。(1) 金属溶射を応用した犠牲陽極方式電気防食工法は、多湿環境、乾湿繰り返し環境、海洋環境、など様々な環境において有効な防食工法であり、特に20℃環境下、海洋環境下等において高い防食効果が期待できる。(2) Al-Zn(AZ)は湿度環境によらず、安定した防食効果が得られる。また、Al-Zn-In(I)は特に多湿環境において極めて有効な防食効果を発揮することが分かった。(3) 解体調査の結果から、いずれの環境においても通電中の防食電流、復極量、および腐食抑制効果の3者には概ね良い相関が得られた。ただし、高温環境化などの苛酷環境下では塗膜の剥離や腐食進行に伴ってこれらの関係が変化する場合がある。(4)コンクリート表面と溶射被膜との付着性は、過酷な環境になるほど低下し、被膜の浮きとして観察された。この現象は防食効果にも影響を及ぼすため、今後、溶射金属の反応特性の把握や下地処理などを含む施工システムの検討や、より長期的な効果の確認等を実施することにより、更に効果的な防食工法となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた(1)金属溶射による高機能被膜システムに関する知見の整理、については当初の計画通りに実施した。(2)防食機構に基づく新しい防食基準の設定、および(3)副次的効果を踏まえた塩分浸透抑制効果の解明についても計画通り実施中であるが、初年度前半を試験体の準備に充て、年度後半に実験開始となったため、まだ十分なデータが得られていないが、次年度以降引き続き実施する予定である。実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に開始した、分割鉄筋入りコンクリート試験体を用いた種々の環境条件下での長期通電試験を次年度以降も継続し、そのデータの収集蓄積を進め、最終的な防食効果を確認した上で、防食機構に基づく新しい防食基準の設定、ならびに各種環境条件や構造物条件に応じた犠牲陽極方式電気防食工法の設計手法の提案することを目指している。なお、初年度に得られた成果を取りまとめた2,3の論文を国内外の学会へ投稿しており、一部は既に掲載が決定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用する研究費として411円の残額が生じたが、これは予算執行上の端数額であることから、次年度の計画変更等は不要であり、当初予定通り使用する計画である。
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