研究課題/領域番号 |
23560553
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山口 明伸 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (50305158)
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研究分担者 |
武若 耕司 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (10155054)
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キーワード | 電気防食 / 犠牲電陽極方式 / 金属溶射 / 溶射金属 / 復極量 / 防食電流 / 防食効果 / 鉄筋腐食 |
研究概要 |
電気防食工法には、「外部電源方式」と「犠牲陽極方式」の2種類がある。「犠牲陽極方式」は、陽極材金属の反応により防食電流を供給するため、電源装置が不要であり、施工が簡便などの利点がある。しかし、本方式では、防食電流の調節ができないため、長期間安定した防食効果を発揮するための陽極金属の種類や施工方法さらに施工方法について十分に検討する必要がある。平成24年度は、金属溶射型流電陽極方式電気防食工法において安定的に防食電流を供給する施工システムおよび溶射金属の種類を検討するため、海洋環境下に供試体を曝露することにより検討した結果、以下のことが確認できた。 (1) コンクリート表面をブラストにより素地調整後、粗面形成材および封孔処理材を用いる施工システムによって通電初期の急激な防食電流の供給を抑制することができ、それによって安定した防食電流を長期的に供給することが可能となる。 (2) 流電陽極方式電気防食では,厳しい曝露環境では外部電源方式で用いられる防食基準を必ずしも達成しない可能性があるが、50mV以上のシフト量があれば、少なくとも無防食と比較して明確な防食効果が得られる。 (3) 亜鉛、アルミニウムおよびインジウム合金のように防食電流の供給能力の高い金属を使用した場合、その防食効果は十分に期待できるが、流電陽極方式電気防食における陽極材の腐食が短時間で生じる。 (4) 亜鉛、アルミニウムおよびインジウム合金とアルミニウムの擬合金は、亜鉛、インジウム合金およびアルミニウムとの擬合金よりも防食電流の供給能力が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度開始した「防食機構に基づく新しい防食基準の設定」および「副次的効果を踏まえた塩分浸透抑制効果」に関する試験を継続するとともに、得られた測定データを用いて、防食基準の設定の前提となる復極量と防食効果の理論的裏付けるための解析的検討を開始している。実環境を想定した室内および屋外暴露実験であるため、実験において腐食進行および防食効果を確認するためにはそれなりの期間を要するが、データの蓄積も進み、経時的変化が現れ始めていることから概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題で実施した実験および解析的結果を総合し、①効果的な防食効果が得られる適用範囲(溶射被膜、環境、劣化レベル、持続期間)の明確化、②適用期間中の管理のための防食基準の設定、③初期費用と被膜交換によるLCC 算定、等の検討結果を踏まえ、高機能塗装システムをコンクリート構造物の予防保全として適用するための最適設計手法を構築する予定である。ただし、初年度に作製した試験体の一部で、被膜の付着強度が極端に低下する現象が認められたため、追加的検討として、溶射被膜の付着強度に着目した検討を開始することとした。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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