電気防食工法には、「外部電源方式」と「犠牲陽極方式」の2種類がある。「犠牲陽極方式」は、陽極材金属の反応により防食電流を供給するため、電源装置が不要であり、施工が簡便などの利点がある。しかし、本方式では、防食電流の調節ができないため、長期間安定した防食効果を発揮するための陽極金属の種類や環境条件さらに施工方法について十分に検討する必要がある。本年度は,昨年度までの実験の継続に加えて,「副次的効果を踏まえた塩分浸透抑制効果」について検討した。主な成果は下記の通りである。 (1)物質移動抑制機構:通電中のコンクリート表面に配する金属溶射皮膜近傍には,樹脂塗膜程度の厚さの帯電領域が形成され,これがコンクリート中への炭酸イオン,塩化物イオン等のマイナスイオンに対する浸透抑制効果を発揮することが出来る。 (2)中性化抑制効果:粗面形成材と金属被膜のみでは中性化抑止効果が得られないが,封孔処理材を加えることにより中性化深さは20~30%程度まで抑制することが可能である。金属溶射被膜厚さの影響も若干認められた。なお,中性化が問題となる環境では,通常コンクリートの含水率が低く,そのため内部鋼材の腐食反応も自然に抑制される。したがって防食電流も自ずと減少することから,通電の有無が中性化抑制効果に及ぼす影響は小さい。この現象は検証実験でも確認された。 (3)塩分浸透抑制効果中性化の場合と同様に,粗面形成材と金属被膜のみでは効果が得られないが,封孔処理材を加えることにより塩分浸透量が50%以下となった。さらに,流電陽極方式による防食電流によって遮塩性がさらに大きく向上した。したがって塩害環境においては,流電陽極方式によって,直接的な鋼材の防食効果だけでなく副次的な塩分浸透抑制効果も期待できることが確認された。
|