研究課題/領域番号 |
23560554
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
富山 潤 琉球大学, 工学部, 准教授 (20325830)
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研究分担者 |
新城 竜一 琉球大学, 理学部, 教授 (30244289)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 遅延膨張性 / アルカリ骨材反応 / ペシマム混合率 / フライアッシュ / 抑制対策 / 促進膨張試験 / 岩石鉱物学 / 耐久性 |
研究概要 |
沖縄県では遅延膨張性アルカリ骨材反応によるコンクリート構造物の劣化が問題となっている.しかし,現行のJISアルカリ骨材反応試験では,その検出が極めて困難である.また,コンクリートの促進膨張試験(残存膨張試験:JCI-DD2)においても同様である.従って,遅延膨張性アルカリ骨材反応(以下,ASR)の評価に適した新しい試験法の開発と抑制対策の検討が急務である.そこで本研究は二つの目的を設定し実施する.(1)遅延膨張性アルカリ骨材反応に対する現行の試験法の適用性と,それに代わる新しい試験法の開発,(2)遅延膨張性アルカリ骨材反応の抑制対策として,内在アルカリ環境および外来アルカリ環境に対する沖縄県産フライアッシュの適用性の検証. 現在までに得られている結果を以下に示す.1)現行JISアルカリ骨材反応試験法(JIS A 1145:化学法,JIS A1146:モルタルバー法)が遅延膨張性骨材の危険性を検出不可能であることを確認した.2)沖縄県では,コンクリート用細骨材として本部産石灰岩砕砂と新川沖産海砂を混合して使用しているが,その混合割合でASRの生じやすさが異なる(ペシマム混合率)ことが分かっていることから,3つの促進膨張試験(カナダ法,デンマーク法,JCI-DD2法)を実施し,ペシマム混合率の検証を行った.その結果,カナダ法において,ペシマム混合率が2カ所で表れるという大変興味深い知見を得た.3)平成25年度に予定している現行のASR試験法に代わる新しい試験法の検証に対して,試行実験を行っている.提案する試験法は,カナダ法,デンマーク法の両試験の結果を基礎データとし,沖縄県の塩害環境を考慮に入れ,NaCl溶液を用いたデンマーク法を基礎とした乾湿繰返し促進膨張試験であり,現在はサイクルや塩分濃度および養生温度などのパラメータを検討している.しかし,未だ良好な結果は得られていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の達成度は,おおむね順調に進展していると判断する.以下にその理由を述べる. 1)現行JISアルカリ骨材反応試験法(JIS A 1145:化学法,JIS A1146:モルタルバー法)が遅延膨張性骨材の危険性を検出不可能であることを確認することに対して,本研究で使用する遅延膨張性を有する海砂に対して実施し,現行の試験では,遅延膨張性ASRの危険性を検出できないことを確認した. 2)ペシマム混合率について,海砂(反応性骨材)と石灰岩砕砂(非反応性骨材)を10%ずつ変化させた11ケースについて促進膨張試験(JCI-DD2,カナダ法,デンマーク法)を実施し,現在結果を整理中である.また,今年度実施するフライアッシュのASR抑制効果についても予備試験を実施し,その効果を確認した.今年度はペシマム混合率に対するASR抑制効果の確認を行う. 3)平成25年度に実施する予定の現行のASR試験法に代わる新たなASR試験法の試行実験(乾湿繰返し試験)を行った.提案試験法についても膨張挙動の発現は緩やかなものの,膨張挙動を確認した.平成25年度に向けて継続して試行試験を実施する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今年度(平成24年度)は,ペシマム混合率の検証を行った促進膨張試験後(カナダ法,デンマーク法)の試験体に対して,岩石鉱物学的な検証を行い,ASRゲルの生成に対してミクロなスケールでの評価を実施する.また,ペシマム混合率に対して,フライアッシュを用い,ASR抑制効果を確認する.促進膨張試験は,カナダ法,デンマーク法である.ただし,今回検証するフライアッシュのASR抑制効果は,外来アルカリに対する抑制効果になる.フライアッシュのASR抑制効果の検証は,促進膨張試験から得られる膨張量の比較以外に,促進膨張試験後の試験体に対して,岩石鉱物学的観点から,ASRゲルの生成抑制効果の検証を実施する.さらに平成23年度から試行試験を実施している乾湿繰返し試験のサイクルや塩分濃度などをパラメータに今年度も試行試験を引き続き行う. 最終年度(平成25年度)は,研究初年度から試行試験を行ってきた乾湿繰返し試験の本試験を実施する.提案試験は,カナダ法,デンマーク法および試行試験の結果をもとに数ケース検証する予定である.その結果成果をもとに,遅延膨張性ASRの評価に適した新しいASR試験法の提案を行いたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
予定している研究費は,乾湿繰返し促進膨張試験用試験器の製作費に40万円,促進膨張試験用試験体製作費(材料費も含む),ゲージプラグおよびステンレスホースバンドや塩化物ナトリウム,顕微鏡薄片用樹脂,研磨剤などの消耗品に50万円,出張旅費に10万円,謝金に20万円の合計120万円の予定である. 乾湿繰返し促進膨張試験器の製作費としては,アクリル板を用いて水槽を二つ作製する.さらに両水槽間のアルカリ溶液を設定養生サイクルごとに移動できるタイマーおよびポンプ,また,水槽温度を設定温度に維持するためのサーモスタット等である. 謝金の内訳は,促進膨張試験の補助と岩石鉱物学的分析の学生補助である.
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