研究課題/領域番号 |
23560560
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
一宮 一夫 大分工業高等専門学校, 都市・環境工学科, 教授 (00176306)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | コンクリート / 補修・補強 / 高吸水性ポリマー / 吹付けモルタル / 自己収縮 / 初期ひび割れ / コスト / 耐久性 |
研究概要 |
本研究のコンセプトは「低コストかつ高耐久な補修・補強用吹付けモルタルの開発」である。そのため,結合材はポルトランドセメントベースで配合は低水セメント比とした。他方,低水セメント比ゆえに自己収縮が大きく,吹付けモルタルでは施工後に乾燥環境にさらされるため初期ひび割れが発生しやすいことから両課題への対策が必要である。 本研究では,普通ポルトランドセメントをベースにシリカフュームを混和材に用いた試作モルタルを製造し,フレッシュ時と硬化後の基礎物性を調べ,市販のポリマーセメントモルタル(PCM)の諸特性との比較から,吹付けモルタルとしての適否を判断する。また,自己収縮や初期ひび割れを低減させる方法として高吸水性ポリマー(SAP)を混和材として用いることの効果を検討する。 平成23年度は,試作モルタルのフレッシュ時ならびに硬化後の特性は,PCMと同等またはそれ以上であることを確認した。フレッシュ時のコンシステンシー評価には申請者が開発した専用の回転粘度計を使用し,試作モルタルとPCMの流動特性はほぼ同じであることからポンプ圧送性や対象面への付着性は実用的に水準に近いと判断した。一方の硬化後の特性は,材料強度(圧縮ならびに曲げ強度),母材との付着強度,乾燥収縮ひずみで評価した。その結果,材料強度と乾燥収縮ひずみは試作モルタルとPCMは同水準で,母材との付着強度は試作モルタルはPCMの1.5倍以上であった。その他にも,試作モルタルでは母材との付着性を高めるためのプライマーの塗布が不要であることもわかった。以上の研究成果は平成24年5月に開催予定のセメント技術大会において発表することになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,「市販のPCMの物性評価実験としてフレッシュ時ならびに吹付け後の物性評価」と「SAPを混和したモルタルの基礎物性ならびに耐久性の評価実験」を予定していた。前者に対してはほぼ予定通りに研究を遂行した。一方,後者ではモルタルのフレッシュ時ならびに強度や長さ変化等の基礎物性は明らかとなったが,モルタルの内部構造の把握,物質浸透性,凍結融解抵抗性についての検討には至らなかった。進捗が遅れた主な理由として,試作モルタルの配合を決めるまでに数カ月を要したことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に実施できなかったモルタルの内部構造の把握,物質浸透性,凍結融解抵抗性に対する検討に加え,申請書に記載したように自己修復性についても検討する。また,シリカフュームの代わりにフライアッシュを用いた配合についても検討し,更なるコスト低減方法を模索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
交付申請書に記載した物品費150,000円,旅費700,000円,人件費・謝金150,000円,その他(外部機関への実験依頼費など)300,000円を予定している。旅費の大部分は外国旅費で,南アフリカで開催される国際会議での研究発表ならびに高吸水性ポリマーのコンクリート用混和材への適用性に関する研究パートナーであるドイツのシュツットガルト大学での滞在費に充てる。
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