研究課題/領域番号 |
23560562
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
齊藤 正人 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (40334156)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 動的相互作用 / 杭基礎 / 地震 / フーチング / Lumped Parameter Model |
研究概要 |
平成23年度は、杭間相互作用係数についての模型振動実験を実施し、地盤非線形性が杭間相互作用係数に及ぼす影響について実験的評価を行った。当該年度は、世界で初めての非線形条件下におけるこの杭間相互作用係数を模型振動実験により求めることができた。実験方法は、埼玉大学所有の水平加振機(油圧加振型、加振力10kN)を用いて杭頭水平調和加振を実施した。地盤材料は岐阜砂を乾燥状態(相対密度77.5%)とした。地盤非線形性の程度を変化させるために加振レベルを0.2m/s2から5m/s2と幅広い範囲で検討した。また、杭配列の構成として、杭間隔s/d(sは杭間隔,dは杭径)を4ケース、杭の加振方向と受信杭との角度(0度、45度、90度)の3つをパラメータとした計12ケースを評価した。その結果、杭間相互作用係数は非線形時においても振動数依存性を保持した複雑な特性を示すこと、近傍非線形性の影響はs/dが2.5の範囲で顕著となることが明らかとなった。また、平成24年度実施を予定していた群杭インピーダンスの非線形性による評価実験は、水平加振実験の一環として鉛直加振より先行して実施した。これにより、上述の杭間相互作用係数を用いたPoulosのsuperposition法による群杭インピーダンスが実験によるインピーダンスと良好に一致することが明らかとなり、非線形時にも同手法が適用可能であることを実験的に証明した。さらに平成25年度に具体的に実施するLPM構築については、本研究代表者が近年新たに提案したモーダルLPMの動的相互作用への適用可能性を模索するため、本年度は先行して単純なフーチング(杭なし)と地盤のインピーダンス特性に関するモデル化手法の評価を行った。複雑な振動数依存性を示す状況を模擬したインピーダンス関数に対して、モーダルLPMは少ない自由度で良好な再現性を示すことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究目的は、杭間相互作用係数についての模型振動実験を実施し、地盤非線地盤非線形性が杭間相互作用係数に及ぼす影響について実験的評価を行うことにあった。上記の研究実績概要に記載の通り、実験準備から実施まで計画通りに遂行できている。また得られた研究成果は、世界で初めてとなる非線形性を考慮した杭間相互作用係数の振動数依存性を実験的に示した内容であり、現在、研究論文としてInternational Journalに投稿用原稿を執筆している。また、交付申請書に記載したように、水平加振の群杭インピーダンスの評価を鉛直加振よりも先行して行った。これにより、上記の杭間相互作用係数を用いたPoulosのスーパーポジション法の妥当性を実験上で検証することができた点は予想以上の成果であり、達成度は十分に満足するものである。加えて、平成24年度に先行して同実験から得られた杭間相互作用係数のモデル化を進めており、水平インピーダンスについては提案モデルが良好に実験結果をシミュレートできることを確認している。平成25年度から詳細なモデル化を行うLPM構築については、本研究代表者が近年提案したモーダルLPM法を複雑な振動数依存性を示す動的相互作用の分野に適用する初めての試みを行い、その適用性を検討した。こちらは平成25年度に向けて順次模索と提案を進めていくスタンスであり、平成23年度はLPMに関する一定の解析的成果が得られたことから妥当な達成度と言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、平成23年度までに実施した水平載荷試験から鉛直載荷試験に切換えて杭間相互作用係数についての模型振動実験を実施し、地盤非線地盤非線形性が杭間相互作用係数に及ぼす影響について実験的評価を行う。また、群杭インピーダンスについても同実験を実施する。鉛直フレームは平成23年度内に設計・施工し設置作業は終了しており、スムーズな実験実施が可能な状況である。平成23年度の水平インピーダンスの検討と同様に、同実験で杭間相互作用係数が得られた後、Poulosのスーパーポジション法の妥当性を実験上で検証する。また、鉛直加振についても杭間相互作用係数のモデル化を行い、その妥当性について評価する予定である。またLPMはGLPMやモーダルLPM等の新しいLPM構築を目指して、順次検討を進めると同時に、具体的な非線形性への拡張方法を提案する(平成25年度)。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、平成23年度内に準備した鉛直載荷用フレームを用いて実験を行い、データ処理またLPMに関する解析検討を行う。そのため、研究費は実験消耗品ならびに解析消耗品で使用する予定である。また、平成24年度は4年に1度開催される第15回世界地震工学会議が開催される(リスボン)。世界各国から多くの地震・地盤工学者が集まり様々な最新の研究発表・討論を行う最良の機会であり、平成23年度に得られたモーダルLPMの解析成果の発表、ならびに多くの関連セッションに参加し積極的な情報収集を予定している。また、平成23年度に得られた実験成果は、速報として土木学会全国大会で発表を予定している。
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