研究課題/領域番号 |
23560563
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
牧 剛史 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60292645)
|
研究分担者 |
浅本 晋吾 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50436333)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 鉄筋コンクリート / 鋼-コンクリート複合構造 / 引張・付着クリープ / 収縮ひび割れ / 設計合理化 |
研究概要 |
本研究課題は,引張・付着クリープを考慮した収縮ひび割れ予測手法の構築,および鋼-コンクリート複合構造接合部の変形特性の構造挙動への影響度評価を目的としており,大きく分けて(1)引張・付着クリープを考慮したRC部材の収縮ひび割れ予測手法の構築とクリープを考慮した地中RC構造物の設計合理化,(2)鋼-コンクリート複合構造接合部のクリープ挙動の解明と構造特性への影響評価,に関する研究を行うものである。 当該年度の研究目的は,引張・付着クリープを考慮したRC部材の収縮ひび割れ予測手法の構築とクリープを考慮した地中コンクリート構造物の設計合理化である。前者については,自由収縮量の異なる各種モルタルおよびコンクリートを対象として、円環供試体および鋼材による一軸拘束試験体を用いた収縮試験によって引張クリープ特性を解明した。その結果,普通セメントを用いた供試体と高炉スラグを混入した供試体では,収縮ひび割れ発生材齢までの間で導入される引張応力や引張クリープひずみにはそれほど大きな差異が見られなかった。ただし,円環供試体と一軸拘束試験体では若干異なる傾向が見受けられたことから,一軸拘束試験体では鋼材とコンクリートの間の付着特性において,クリープのような時間依存性が存在し,これが結果に影響している可能性が示唆された。 また,後者については,実験や数値モデルの構築に先立って試的な有限要素解析を実施し,コンクリートのクリープの程度に伴う地中ボックスカルバートの作用土圧変化の定量的把握,および部材厚や鉄筋量の低減可能性に関する数値的検討を先行して実施した。圧縮クリープのみを考慮した場合,部材のクリープ変形に伴い作用土圧が小さくなる傾向が認められ,部材厚や鉄筋量を低減できる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RC部材の収縮ひび割れ予測に対しては,収縮に伴うパッシブな引張応力による引張クリープ特性を解明することによって,第一段階はまず達成された。鉄筋とコンクリートとの相互作用に基づく付着クリープが及ぼす影響については,まだその可能性が示唆された段階であり,定量評価するには至っていないので,この観点ではやや遅れ気味であると言える。地中RC構造物の設計合理化に対しては,前倒しで実施した試解析によって合理化の可能性が示されたと同時に,考慮すべきクリープの程度の目安が付けられたことから,今後の研究の進行に対して有用な知見となると言える。以上より,研究の目的に照らして総合的に判断すると,研究はおおむね順調に進展していると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の目的と当該年度の研究成果を踏まえ,特に次年度は以下の2項目について研究を進展させる予定である。(1)クリープを考慮したRC部材の収縮ひび割れ予測手法の構築:鉄筋を埋め込んだ角柱試験体の収縮試験を実施し,鉄筋周囲の局所圧縮応力および局所引張応力に伴う付着クリープ特性の検討を行い,併せてこれが収縮ひび割れに与える影響について定量的な検討を行う。(2)鋼-コンクリート複合構造接合部のクリープ挙動の解明:複合構造接合部で最もよく用いられる頭付きスタッドを対象として、鋼桁とコンクリートブロックをずれ止めで接合した供試体の押抜き試験を行い、スタッドのせん断力-ずれ変位関係におけるクリープ特性を解明する。その際,せん断力を作用させる際のコンクリートブロックの応力状態を数パターン変化させることによって,これがせん断力-ずれ変位関係に及ぼす影響についても併せて明らかにする。 次々年度(最終年度)では最終的に,収縮ひび割れ予測手法の構築,クリープを考慮した地中RC構造物の設計合理化,鋼-コンクリート複合構造の構造特性に及ぼす接合部の時間依存変形の影響の評価に繋げることを予定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は主として,鉄筋を埋め込んだ角柱供試体の収縮試験と,スタッドの押しぬきせん断試験に研究費を使用する。研究費の用途としては,コンクリートや鉄筋,ひずみゲージなどの消耗品の他に,スタッドの押し抜き試験体を作製するためのH型鋼や頭付きスタッド,およびスタッドを鋼に打設するための費用が必要となる。
|