研究課題/領域番号 |
23560565
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
斉藤 成彦 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (00324179)
|
キーワード | 物質移動解析 / 材料劣化 / コンクリート構造物 / 剛体バネモデル / 数値解析 |
研究概要 |
現在、材料劣化の生じた既設コンクリート構造物が現有する構造性能の評価では、点検より得た外観変状に基づき性能をグレード分けする半定量的手法を用いているのが現状であるが、構造物の長寿命化が要求される中で、残存する構造性能を定量的に把握する手法の開発が必須となっている。非線形構造解析手法は、有用な性能評価手法として期待されているが、供用中の既設構造物における点検より得られる情報は限定的であり、劣化状況のモデル化が困難な状況である。 本研究は、塩分や二酸化炭素といった劣化因子のコンクリート中の物質移動解析によって点検結果を補間し、構造性能を定量的に把握するための構造解析手法を開発することを目的とする。 平成24年度は、マクロセル腐食モデルに基づく鋼材腐食モデルの構築を行うとともに、俄かに性能評価が必要となっている鋼材腐食の生じたPC部材の性能評価を行った。鋼材腐食モデルは、剛体バネモデルの鉄筋要素に対し、分極曲線を仮定することで腐食電流密度を求めるものである。アノード分極曲線とカソード分極曲線のモデル化を変えることで、マクロセル腐食とミクロセル腐食を再現することを試み、コンクリート中の物質の移動から、鉄筋の腐食までをシームレスに扱うことのできるモデルを構築した。今後、分極曲線のモデル化を検討し、環境条件の異なる部材に対し、腐食性状の評価を試みる予定である。 プレストレストコンクリート(PC)部材については、電食により腐食させたPCはり部材の耐荷性状を実験的に調べ、PC鋼材の局所的な腐食がはりの耐荷性状に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。PC鋼より線の場合、より線ごとの腐食のばらつきや、局所的な腐食が部材の耐荷挙動に大きく影響を及ぼし、PC鋼材の局所的な降伏および伸びや、より線の破断によって、載荷初期の剛性低下や最大荷重の低下を招くことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画にあった腐食速度のモデル化は、90%の進捗状況であり、分極曲線の具体的なモデル化に必要な情報を収集中である。腐食速度モデルを構築すれば、環境条件の異なるRC部材の腐食性状を評価可能となり、研究はほぼ当初の計画通り進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
物質移動解析モデルを完成させ、腐食程度や空間分布をパラメータとした基礎的な数値解析を行うことにより、点検より得られる情報のレベルから構造性能をどれだけ定量的に評価可能であるかについて検討を行う。これにより、実際の点検において、どの程度の範囲でどれだけの質の情報を得れば、構造解析により評価が可能であるか把握することができ、点検と構造解析を利用した評価方法の連携を強化するとともに、最終的には、既設構造物の定量的な性能評価のためのガイドライン策定に向けた資料を提供する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|