研究課題/領域番号 |
23560575
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
押川 渡 琉球大学, 工学部, 准教授 (80224228)
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キーワード | ACMセンサ / 腐食性評価 / 海塩 / 腐食比 |
研究概要 |
高度経済成長期に建設された鋼橋等の社会資本の劣化損傷の危険性が高まりつつある。新規に建設は容易ではなく,維持管理によって長寿命化を図ることが有効と考えられている。維持管理のためには実環境の腐食性評価と長期寿命予測の確立が不可欠である。長期寿命予測を行うにあたり,実際の屋外暴露試験では長期の時間が必要になるために,実験室内における加速試験方法の開発が望まれている。 加速試験を始めるにあたり,実験条件によっては,異なる種類の鋼材の腐食量の比が大きく異なる場合がある。これは鋼種毎に劣化要因が異なることが原因である。そこで,実際の環境下において,鋼種間の腐食比がどのように変化するのかを確認するため,炭素鋼,亜鉛めっき,純亜鉛の試験片を数カ所において暴露を始めた。一年後回収して検証する。加速試験法の条件設定においても,ある環境を想定した時に,腐食比がどの程度になるかで大気環境を規定できると考えられる。加速試験としては,過酷な環境になりすぎないよう,塩水濃度を3%あるいは0.03 %と変化させて実験を行い,異なる鋼材間の腐食比を比較した。炭素鋼と亜鉛の腐食比を比較すると,3%では約8倍であるが,0.03%では約30倍となった。亜鉛の方が塩水濃度に敏感であり,炭素鋼はさほど腐食速度が変化しないからである。塩水濃度だけでなく,乾燥や湿潤条件を変化させることで腐食比が変化することが予想される。 ACMセンサに代わる安価で簡易な亜鉛めっき鋼板を用いた小型センサでは,海塩付着量の多い環境下では赤さび発生率が高くなる傾向にあることが判明し,暴露環境を評価できる見通しが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新たに提案する加速試験法において,一定量の海塩を付着させる方法の開発が停滞している。インクジェットプリンタを用いる方法には成功したが,適用サイズが3cm×3cmと小さい。インクジェットプリンタではなく,コンプレッサーとノズルを組み合わせた方式への変更を検討中である。これが達成できない場合には,超音波霧化装置での付着を行うこととする。また,恒温恒湿装置の故障もあり,一定量の海塩を付着させた乾湿繰り返し試験が進んでいない。装置は修復したので,今後,実験を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
実際の腐食環境下における炭素鋼と亜鉛および亜鉛めっきの腐食比を1年暴露試験において検証する。その腐食比と同等であり,かつ促進性を備えた腐食試験を目指す。一定量の海塩をコンプレッサーとノズルを組み合わせた方式等により付着させ,恒温恒湿試験において加速試験を行う。また,塩乾湿複合サイクル試験においても,塩水濃度,湿潤のサイクルを変化させ,腐食比が同等となる条件を確立させる。それらの試験時に小型の亜鉛めっきセンサおよび従来のACMセンサを設置することで,環境条件を把握する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果を学会発表するための出張,試験片としての鋼材購入,さびの組成分析のための分析費用を予定している。
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