研究課題/領域番号 |
23560576
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
上島 照幸 宮城大学, 食産業学部, 教授 (90371418)
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研究分担者 |
塩尻 弘雄 日本大学, 理工学部, 教授 (20267024)
仲村 成貴 日本大学, 理工学部, 講師 (80328690)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 常時微動・地震動 / 長期継続観測 / アーチダム / 振動特性 / 経時変動 / 地震時変動 / 有限要素法解析 / 構造健全性診断 |
研究概要 |
(1) 竣工より50年程度を経たアーチダムにおいて微動・地震動の長期継続観測システムを構築した。観測対象ダムは堤高82.0m、堤頂長323.0m、総貯水容量28,000,000m³、堤体積 226,000m³の規模を持つ日本で唯一のダブルアーチ式コンクリートダムである。左岸側アーチ部のほぼ中央に放水用ゲートがあり天端は幅員4.4mの一般道になっている。観測点はいずれも天端上に設置した。長期継続観測における観測量は各観測点毎に地震動から常時微動レベルまでのそれぞれ水平2方向の加速度と上下方向加速度である。ダム基部に関しては、ある程度の規模の地震動があった場合には既設地震観測データを使用させて頂くものとした。また上・下流側それぞれにおいて堤体表面温度・気温の観測も行っている。これらの観測データを分析して主として以下の諸点を明らかにした;1) 微動記録の分析から観測対象ダムの固有振動数および減衰定数を同定した。約半年間に亘る固有振動数の経時変動をみてみると夏期から冬期にかけて固有振動数はダム表面温度と相伴って低下しており両者には正の相関があることが示唆された。一方、夏期から冬期にかけての固有振動数の低下に対してダム貯水位の変動が与えた影響は大きくはなかったものと推察されるが、より詳細な検討は今後の課題である。2) 強震動およびその前後での微動のスペクトル解析によれば、地震前微動時卓越振動数に比して地震時卓越振動数は著しく低下していたこと、地震後微動における卓越振動数は地震前微動における卓越振動数に概ね復していたこと、などが明らかとなった。(2) 常時微動の短期高密度観測を実施し、対象ダムの振動特性として3つのモードを同定した。また高密度観測結果を表現できる3次元有限要素モデルを作成し、ダム堤体のコンクリートと岩盤の弾性係数を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)既設ア-チダムにおける微動・地震動の長期継続観測システムを年度の早い段階で構築し、観測を開始し、継続実施している。温度観測についても、上流側、下流側においてそれぞれ、堤体表面温度、気温の観測を開始し、継続実施している。(2)常時微動の短期高密度観測とそのデータ解析を実施し、高次の振動特性(固有振動数、モード減衰定数、モード形状)を同定した。また、3次元有限要素法による解析については平成24年度からの検討を予定していたが、ベースとなるモデルが平成23年度に作成できた。(3)微動の長期継続観測データの同定を行い、観測対象ダムの振動特性を把握した。また、ダムの固有振動数の半年程度に亘る経時変動を把握した。(4)観測対象ダムの卓越振動数は強震動時には地震前微動時に比して著しく低下していたことを明らかにした。また地震後微動における卓越振動数は,地震前微動における卓越振動数に概ね復したものと見ることができることも明らかとなった。(5)約半年間での固有振動数の変動をみてみると,夏期から冬期にかけて固有振動数はダム表面温度と相伴って低下しており,両者には正の相関があることが示唆された。一方,夏期から冬期にかけての固有振動数の低下に対して,ダム貯水位の変動が与えた影響は大きくはなかったものと推察されるが,より詳細な検討は今後の課題である。また別のモードに対しての検討も今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)微動・地震動・温度の長期継続観測を引き続き実施する。(2)蓄積されてきた、また今後さらに蓄積されていく観測データの解析を引き続き行い、より長期間での振動特性の経時変動を明らかにする予定である。(3)ダムの固有振動数~堤体表面温度関係、貯水位との関係を個別に明らかにし、固有振動数の経時変動へのそれらの寄与率を検討する予定である。ダムの固有振動数の経時変動にダム変位との相関はあるか、についても検討する予定である。また検討済みのモード以外では、それらの相関関係はどのようであるかについても検討する予定である。(4)観測対象ダムの卓越振動数は大規模地震時には微動時に比して低下するとの現象について、より掘り下げた検討を行う予定である。また既設地震計記録を入手し、過去の大規模地震と最近の大規模地震とでダムの振動特性に変化があるかについても検討を行う予定である。(5) 作成した3次元有限要素モデルをさらに詳細に検討することで対象ダムの振動特性を精緻に把握する。具体的には、ダム貯水部のモデリングおよび地震応答解析に基づいた強震時の挙動を把握する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品の購入予定はない。消耗品費としてはOA消耗品に\40千円程度、国内旅費としては成果発表旅費、研究打合せに\120千円程度、外国旅費として成果発表旅費に\380千円程度*1)、謝金としてはアルバイト費用などに\20千円程度、その他として既設地震計記録購入*2)、データ回収・機器点検業務委託、データ解析ソフトウェア改修、講演会登録参加料、論文掲載料などに\450千円程度、それぞれ充てる予定である*3)。*1) 当初、宮城大学学内より拠出される「国際学会等発表旅費」を申請予定であったが、平成24年度より学内規則が変更され、最大\200千円までの拠出となったため、また他の費目で補填することが出来ないことになっているため、海外での成果発表旅費を科研費にて充てることにしたもの。平成24年度予算では当初の予定になかったが、平成25年度予算で若干の額を充てていたため、平成25年度予算に一部くい込んで、また他の費目に充てる予定であった費用を削って平成24年度外国旅費に充てる予定である。*2) 当初は、平成23年度中に購入予定であったが、諸々の事情により平成23年度中での購入をすることが出来なかったため、予算を繰り越して平成24年度に購入することにしたもの。*3) 平成24年度研究費の使用予定総額は、平成23年度からの繰越金(\260千円)を加えた平成24年度予算額(直接経費、\860千円)を上回って、\1,010千円となるが、上回った額:約\150千円は、当初計画で、平成25年度に予定していた成果発表のための外国旅費に相当する金額である。
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