研究課題/領域番号 |
23560577
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
角掛 久雄 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90326249)
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研究分担者 |
大内 一 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00433293)
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キーワード | 高靱性モルタル / せん断補強 / 曲げ補強 / 合成部材 / 桟橋 |
研究概要 |
建設投資削減の中、長寿命化が求められており、そのためには特に耐震性と耐久性への配慮が重要になる。そこで、特別の養生を必要としない通常圧縮強度を保有し、引張靭性のみを改善した高靭性モルタルに着目し、柱・はり部材を対象にその外殻部に高靭性モルタルを用いた高耐震性、長寿命などの特徴を有する新合成製構造を開発することで高靭性モルタルの利用拡大を目指すものである。 初年度において材料特性および補強材として基礎的研究よりせん断補強には高靭性モルタル単体での補強は有効であり、せん断補強に対して十分な補強効果を得ることができたことを受け、FEMシミュレーション解析による数値解析による検討から数値実験および検証実験を実施し、ディープビームにおけるせん断補強時の耐力式の提案を行った。 パネルとして接着した場合の合成効果および有効性について検討を行い、せん断補強時の高靱性モルタル単体での有用性が明らかになったことを受け、安価な補強を実現するためにアンカー等の付加的な定着具を用いずコンクリート表面の目荒らしのみの状態で高靱性モルタルを打設した場合の検証を行った。その場合でも十分な定着が確保でき、補強時に合成部材として挙動をすることが確認できた。 本研究で使用した高靱性モルタル単体ではひび割れ分散性が発揮されないため補強効果が小さいことを受け、引張鉄筋を露出させた状態での補修材として用いた場合にひび割れ分散性が発揮され補修材としての有用性を明確できた。曲げ補強部材として利用するためのより有効な引張補強材の組合せの検討が課題となった。 高靱性モルタル補強時の劣化促進実験については鉄筋コンクリート部材に対して巻き立て補強した梁部材に対して初期ひび割れを発生させ、暴露試験を実施している。次年度においてコンクリートと鉄筋の劣化および残存耐力の曲げ耐力等の確認を実施してゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①せん断補強:昨年度に部材試験結果を踏まえ、数値実験によりディープビームの場合のせん断補強のメカニズムを検討し、高靱性モルタル補強時のせん断耐力式の提案を行った。その後、更なる検証実験により補強高さによる影響も明らかにし、補強部材として適用性を明らかにした。ただし、せん断スパン比が大きい場合の検討には至っていないため、まず、数値解析による今後の検討を実施したい。 ②合成方法の検討:現場での高靱性モルタル打設時の定着方法にも着目を行い、より安価かつ施工性を考慮し、目荒らしのみで定着させた場合のせん断補強実験を行い、十分な合成効果が得られ、かつせん断補強効果が発揮されることを明確にした。 ③曲げ補強に関しては、本研究で使用した高靱性モルタル単体では補強効果が小さいが、引張鉄筋を巻き込む形での補修の場合にはひび割れ分散性が良好になり補修効果を発揮できた。そのため、今後有用な曲げ補強材として利用するために他の引張補強材と組み合わせた合成部材としての開発が必要であり、より有効な引張補強材の組合せの検討が課題となった。 ④耐久性に対しては暴露試験を実施しているため、今後検討を行うことが可能である。 せん断補強に対する検討については初年度から、良好な結果が得られたことから、せん断補強を優先して進めたため、ディープビーム限定ながらせん断補強耐力の算定式を提案するに至り良好進展している。しかし、曲げ補強については高靱性モルタル単体での補強効果が小さいことから、他の引張補強材との組み合わせなど、更なる検討事項があり、若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
せん断補強については実用性を広げるため、せん断スパン比の大きな場合についても検討を行う。今年度までにせん断スパン比の小さなものについては実験等で検討が出来ているので、その結果を踏まえて補強高などをパラメータに数値実験を行い、せん断スパン比の大きな場合についても補強効果を明らかにし、その上で、追加実験の必要性が生じた場合は実験を実施した上で、せん断補強の有効範囲および補強時のせん断耐力について算定式の提案を行う。 曲げ補強については最も課題として明確になっている高靱性モルタルと他の引張補強材との組合せ(新構造部材の提案)の検討を行うため、高靭性モルタルを用いた合成部材の力学特性について実験を行う。具体的には、施工性と経済性および補修・補強効果の観点から検討を行い、様々な引張補強材で補強した高靭性モルタルの特性などを実験により検討して適切な補強方法の提案を行う。 耐久性について実施中である暴露試験を踏まえて高靭性モルタルを用いた場合の耐久性改善効果を検討するため、RC部材、RC部材に対して高靭性モルタルを外郭材に用いた合成部材および普通コンクリートを用いず高靭性モルタルのみを鉄筋で補強した部材に対してひび割れを発生させた状態で、塩分を浸透させて暴露試験を行い、暴露後の残存耐力の低下や鉄筋の腐食状況を検討し、耐久性への高靭性モルタルの有用性を明確にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の予算1,200,000円を以下のように用いる計画とする。 せん断補強による数値実験を行うため、有限要素法を用いた汎用解析ソフトを利用する。そのため、解析ソフトのライセンス料315,000円が必要となる。 引張補強材と組み合わせた場合において、鉄、竹、カーボン、FRPグリッド、ガラスネットなどの数種類との組み合わせを検討する。引張試験体に対して最低3×6=18体および曲げ試験体6体必要となる。供試体製作に関わる材料費、型枠台として385,000円を見込む。 上記試験および耐久性試験において、ひずみゲージおよび載荷治具等として200,000円を見込む。 昨年度の研究結果の発表のため、論文の投稿や発表のための費用が発生するため、研究分担者と併せて200,000円を見込み、コンクリート材料を用いた実験を行う場合実験後の廃棄処理も適正に行う必要があるため、廃棄処理代として100,000円を見込む。
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