建設投資削減の中、長寿命化が求められており、そのためには特に耐震性と耐久性への配慮が重要になる。そこで、はり部材を対象にその外殻部に高靭性モルタルを用いた高耐震性、長寿命などの特徴を有する新合成製構造を開発することで高靭性モルタルの利用拡大を目指すものである。 初年度において材料特性などの基礎的研究から、せん断補強には高靭性モルタル単体での補強は有効であり、せん断補強に対して十分な補強効果を得ることができた。その結果、ディープビームにおけるせん断補強時の耐力式の提案を行った。 次年度においてせん断補強時の一体化について検討を行い、安価な補強を実現するためにアンカー等の付加的な定着具を用いず、コンクリート表面の目荒らしのみの状態で高靱性モルタルを打設した場合でも、補強時に合成部材として挙動をすることが確認できた。また、引張鉄筋を露出させた状態での補修材として用いた場合に曲げひび割れ分散性が発揮され補修材としての有用性を明確できた。 最終年度においては、耐久性および曲げ補強を中心に実施した。耐久性に関しては初期ひび割れを発生させて暴露試験を実施した結果、高靱性モルタルで巻き立てることで耐久性向上することが分かった。ただし、コンクリートと鉄筋の劣化および残存曲げ耐力について定性的な傾向を得ることに留まった。 曲げ補強については、様々な材料の補強材と高靱性モルタルを組み合わせた実験および解析を行い、部材降伏までは補強材の伸び剛性(弾性係数)が高いものを用いた方が、ひび割れ分散性に効果があった。また、カーボンやアラミドの様に鉄筋より弾性係数が小さな補強材を用いた方が、高靱性モルタルの補強効果が継続する変位が大きくなり、強度設計に対する補強においては高弾性カーボンと組み合わせることが高靱性モルタルの効果が最も得られることを確認できた。
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