研究課題/領域番号 |
23560586
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
木幡 行宏 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90215301)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 地盤防災 / 流動化処理土 / 非排水三軸試験 / 軸ひずみ速度 / 力学特性 |
研究概要 |
本研究では,都市域における埋戻し地盤の耐震補強として,繊維材混合流動化処理土を用いた場合に,どの程度の補強効果が期待できるものかを実際のモデル地盤において検討するという着想のもと,大学構内のピットにおいてモデル地盤を作製し,小型FWD試験によって地盤の非一様性の程度を詳細に検討するとともに,養生日数の影響を明らかにする。さらに,埋戻し地盤の耐震補強工法として考えられる繊維材混合流動化処理土の原地盤への適用方法について検討するともに,実際の合理的な施工方法を提案することを目的としている。 本年度の研究では,繊維材混合流動化処理土に対し,新たに開発された特殊土用セメント系固化材を用いた場合の圧密非排水三軸圧縮試験を98kPaの等方応力条件下で行い,せん断時の軸ひずみ速度が10倍異なる三軸圧縮試験,軸ひずみ速度を載荷中に10倍変化させた三軸試験及び載荷中に応力持続載荷を行った場合の三軸試験を行い,繊維材混合流動化処理土の強度・変形特性における時間依存性について検討した。その結果,軸差応力~軸ひずみ関係は繊維材を混合すると,軸ひずみ速度の影響を受けにくくなると考えられ,ピークに至るまでの軸差応力~軸ひずみ関係における非線形性を弱める傾向が見られることが明らかにされた。また,軸差応力~軸ひずみ関係においてピーク前であれば,繊維材を混合すると,その補強効果により,大きな剛性を示す範囲が増大すると考えられることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,これまでの研究成果をもとに,平成23年度は,これまでの研究で取り残されている室内作製供試体による繊維材混合流動化処理土の微小ひずみレベルでの三軸せん断特性について検討するとともに,大学構内のピットでのモデル地盤の作製と小型FWD試験によるモデル地盤の非一様性の検討を中心的に行うとしていた。 上述のように,平成23年度には,繊維材混合流動化処理土に対し,新たに開発された特殊土用セメント系固化材を用いた場合の圧密非排水三軸圧縮試験を98kPaの等方応力条件下で行い,せん断時の軸ひずみ速度が10倍異なる三軸圧縮試験,軸ひずみ速度を載荷中に10倍変化させた三軸試験及び載荷中に応力持続載荷を行った場合の三軸試験を行い,繊維材混合流動化処理土の強度・変形特性における時間依存性について検討したことから,「三軸せん断特性の検討」は,計画通りに進展したと考えているが,「モデル地盤の作製と小型FWD試験によるモデル地盤の非一様性の検討」においては,学内ピット設置箇所の確保に手間取ったことから,実際のモデル地盤の作製を実施できなかったが,小型FWD試験の実施方法やモデル地盤の構築方法等に関する計画の作成を実施した。 以上より,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として,まず,「モデル地盤の作製と小型FWD試験によるモデル地盤の非一様性の検討」を実施する計画である。すなわち,配合試験により決定した配合で,埋戻し材として耐震補強された繊維材混合流動化処理土によるモデル埋戻し地盤を作製し,原地盤の剛性評価を小型FWD試験によって行う。また,小型FWD試験によって得られるK値の結果から,モデル地盤の非一様性の検討を行う。申請している小型FWD試験装置は,重錘を自由落下させ,そのときの衝撃荷重値と変位量を荷重計,加速度計を用いて測定する装置である。本研究では,原地盤の変形係数を把握することが耐震補強を目的とした繊維材混合流動化処理土の原地盤への実用化に大きく影響することから,本試験装置を用いて地盤の剛性評価を行うことが重要である。 また,繊維補強した流動化処理土の繰返し載荷三軸せん断特性の検討として,モデル地盤からブロックサンプリングした試料に対する繰返し載荷時の変形特性の検討を行う。具体的には,地盤材料の変形特性を求めるための繰返し三軸試験を実施し,変形係数のひずみレベル依存性,せん断応力レベル依存性,履歴減衰係数に及ぼす養生日数の影響を検討する。さらに,非排水繰返し三軸試験を実施することにより,せん断中の累積損傷についても明らかにするとともに,繊維補強した流動化処理土のモデル地盤での小型FWD試験による剛性評価を行うために,モデル地盤において小型FWD試験を実施し,原地盤の剛性評価を行い,養生日数の影響を検討する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度には,繊維補強した流動化処理土の排水三軸せん断特性の検討として,モデル地盤からブロックサンプリングした試料に対する排水せん断変形特性の検討を行う。具体的には,微小ひずみレベルからの排水三軸圧縮試験を実施し,変形係数のひずみレベル依存性,せん断応力レベル依存性,ダイレイタンシー特性に及ぼす養生日数の影響を検討する。また,繊維補強した流動化処理土のモデル地盤での小型FWD試験による剛性評価を行うために,モデル地盤において小型FWD試験を実施し,原地盤の剛性評価を行い,養生日数の影響を検討する。さらに,繊維材混合流動化処理土の原地盤への適用方法について検討として,上記の試験結果に基づいて,埋戻し地盤の耐震補強工法として考えられる繊維材混合流動化処理土の原地盤への適用方法について検討するともに,実際の合理的な施工方法を提案する。 これらの研究を遂行するために,静的三軸試験装置に必要な動ひずみアンプの購入およびモデル地盤作製に必要となる地盤材料の購入,さらに,他の研究機関との研究内容に関する意見交換や成果発表のために必要となる旅費等に研究費を使用する計画である。
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