研究概要 |
分子動力学法により粘土ユニット周囲の水の粘性、拡散係数を計算するとともに、系全体のせん断力を求めた。さらにせん断力についてはAFM(原子間力顕微鏡)により測定されたミクロ摩擦力(実測値)と比較した。MD計算には、膨潤性粘土鉱物であるスメクタイト(Na型、Ca型)を用い、同形置換は四面体シートではSiの1原子置換, 2原子置換, 3原子置換の3ケース、八面体シートにおいても同様に3ケース設定した。計算条件は、温度20℃, 総ステップ数2000000steps, 時間刻み幅は0.3fsとした。水分子相互作用のポテンシャルにはKKYポテンシャルを用いた。水の粘性係数は水分子1層のときη=2.1×10^2Pa・s、2層のときη=2.0×10^2Pa・s、3層のときη=1.8×10^2Pa・s、ランダムのときη=0.8×10^2Pa・sであり、積層数が増えるほど粘性係数は小さくなる。水の拡散係数は水分子1層のとき D =0.4×10^-9m2/s、2層のとき D =4.1×10^-9m2/s、3層のとき D =5.9×10^-9m2/s、ランダムで D =6.2×10^-9m2/sとなり、積層数が増えると拡散係数は大きくなる。せん断力は水分子1層のときτ=125kPa、2層のときτ=122kPa、3層のときτ=105kPa、ランダムでτ=81kPaであり、積層数が増えるほどせん断力は小さくなる。MD計算結果とAFM測定値との比較では、MD計算値はAFM測定値の50~60%程度であった。
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