研究課題/領域番号 |
23560588
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
今泉 繁良 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20023335)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 廃棄物最終処分場 / 土質系遮水工 / 局所沈下 |
研究概要 |
廃棄物最終処分場で使用されるベントナイト混合土遮水層の基盤の局所沈下に伴う変形挙動と亀裂発生、それによる遮水機能の変化を明らかにするために落とし戸装置の改良と送水・通過水評価実験を実施し、以下成果を得た。1.従来の落とし戸装置はジャッキを手動で操作しており落とし戸の沈降速度を制御することが難しかったので、速度制御型電動モータを購入して、電動落とし戸装置に改良した。また、ベントナイト混合土層上面に送水する加圧タンクと落とし戸土槽との間に流量計を設置した送水装置、混合土層を通過する水を集めてその質量を計測する通過水計量装置を作成した。これらの装置をデータロガーとパソコンに接続して、自動継続測定できるシステムを完成させ、実験の精度向上・省力化を図ることができた。2.砕石砂にベントナイトを乾燥質量比で10%添加し、最適含水比で締め固めたベントナイト混合土層に対して落とし戸を沈降させた実験を行い、約4mm沈降させたときに層の下方から亀裂が発生し、10mm沈降で層の50%深さまで亀裂が沈降し、30mm沈降では亀裂が層の上面まで貫通することを明らかにした。そして、落とし戸支持荷重とベントナイト混合土層上土圧の変化から、亀裂はせん断によるものであり、従来言われてきた曲げ亀裂とは異なるものであることを明らかにした。3.落とし戸の沈降が10mm、即ち、亀裂が層の中央深さまで進行した段階で行った送水試験では、送水後130分までは通過水がみられたが、その後通過水が止まり、ベントナイトの膨潤による遮水効果を確認できた。しかし、落とし戸を30mm沈降させ亀裂が層を貫通した段階では、通過水が止まることなく、ベントナイトの流出も見られ、遮水効果が無くなることがわかった。4.送水に伴うベントナイト混合土層内の含水比は、混合土層上面と亀裂発生近傍で10%程度上昇し、この付近での変化が著しいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
落とし戸試験装置電動化の改良と、遮水性能を評価するための送水装置・通過水量計測装置の作成、ならびにこれらをデータロガーとパソコンに接続させて自動計測するシステム作りは目的・計画通り完了することができた。砕石砂を用いた厚さ10cmのベントナイト混合土層に対する落とし戸実験も順調に実施することができ、今まで実施してきた異なる母材を用いて得た結果、すなわち、亀裂が発生するときの落とし戸沈降量は6mm程度、亀裂が層の中央深さに達する沈降量は12mm程度、と比較してほぼ同量であり、許容沈降量の確立に向けた貴重な結果を得ることができた。亀裂の進展状況と遮水機能との関係について、層厚10cmの試験結果として、亀裂の進展が層の50%深以内であればベントナイトの膨潤による遮水機能が期待できるという知見を得られたことの意義は大きい。他方、平成23年度に、落とし戸の沈降に伴うベントナイト混合土層の変形状況、特にひずみの分布とその変化を知るために変形状況をビデオカメラで撮影してそれを画像解析して評価する計画であったが、撮影した画像が解析のために要求される画質を満足せず、画像解析することができなかった。これは、土槽前面のアクリル板が長年の使用により微細な傷が入っているためであり、新しいアクリル板への交換が必要であることがわかった。また、含水比の層内での分布を評価することはできたが、含水比の時間的変動を正確に把握ための努力が今後も必要である。
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今後の研究の推進方策 |
室内実験に関しては、ベントナイト混合土層の厚さを20cmとして、実際(厚さ50cm)により近い条件で行う予定である。また、ベントナイト混合土内での亀裂の発生と進展を抑制する方法として、ジオネットをベントナイト混合土層下面に敷設する方法が考えられるので、その効果を確認するするための落とし戸実験を実施する。さらに、平成23年度に実施できなかったベントナイト混合土層の変形状況をビデオ撮影して、その画像解析によってひずみ分布とその変動を評価することに関しては、平成23年度の経費でアクリル板を購入したので、平成24年度にアクリル板を加工して新しい土槽を完成させ、画像解析を成功させる予定である。遮水性能を評価するための液体として、現在、脱気した蒸留水を使用しているが、実際の最終処分場に貯留する浸出液は、各種の陽イオンを含んでいる。ベントナイトは陽イオンの種類によってはその膨潤性が異なるので、陽イオンを含む疑似浸出液を用いた送水・通過水量計測実験も行う予定である。さらに、室内実験では、落とし戸装置の大きさの制限から、模型ベントナイト混合土層厚さは最大20cmまでである。しかし、実際に敷設される土質系遮水工の厚さは50cmであるので、学外の施設(または現場)を借りた層厚50cmの大型模型遮水層を造り、局所沈下実験とそれに付随する遮水性能評価実験を、平成24・25年度に各数ケースづつ行い、室内実験から得た成果との整合性を検証する予定である。以上の室内実験と学外大型実験のデータを整理・解析して、ベントナイト混合土層が遮水機能を維持しうる許容局所沈下量とその簡易評価式、亀裂発生防止広報を明らかにする(平成25年度)。
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次年度の研究費の使用計画 |
学外で行う層厚50cmのベントナイト混合土層に対する局所沈下・遮水性能評価実験の実施のため、砕石砂・ベントナイト・セメント・有孔パイプ・鋼材などの材料費購入に520千円、学生の謝金に209千円、大学と現場との往復のための車両借り上げに122千円を使用する予定である。実験から得られるデータの保存のためのハードデスクに40千円、土壌水分計センサーに54千円の使用も予定している。室内実験に関しては、学生への謝金として114千円、文具・複写費等に25千円を予定している。研究遂行に必要な資料調査・研究打ち合わせのための旅費として71千円を予定している。研究成果を、八戸で開催される地盤工学会研究発表会とバリ島で開催される廃棄物処分場に関するアジア太平洋国際会議にて発表するので、そのための旅費295千円と成果発表費50千円を使用する予定である。
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