研究課題/領域番号 |
23560588
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
今泉 繁良 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20023335)
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キーワード | 廃棄物最終処分場 / 土質系遮水工 / 局所沈下 / 画像解析 |
研究概要 |
実験室において、砕石砂にベントナイトを10%したベントナイト混合土を厚さ10cmと20cmに締め固めた模型ベントナイト混合土層に対して落し戸実験とその後に浸透実験を行った。このとき、ベントナイト混合土層の下面にジオネットを敷設した実験も行いその効果を検討した。また、屋外に実サイズの厚さ50cmに締め固めた大型模型ベントナイト混合土層を作製し、局所沈下実験と浸透実験を行った。これらの結果を考察・評価して、遮水機能を損なわない許容沈下量の把握を試みた。さらに、以上の落し戸実験と局所実験中におけるベントナイト混合土層の変形挙動をビデオカメラで撮影し、その画像を解析した。その結果、以下の成果を得た。 (1)室内実験から、ジオネットを敷設しない場合の許容沈下量は、厚さ10cmのベントナイト混合土層で10mm程度、厚さ20cmで30mm程度であった。他方、ジオネットを敷設した場合の許容沈下量は、厚さ10cmで45mm程度、厚さ20cmで30mm程度であった。(2)べントナイト混合土層の下面にジオネットを敷設すると、許容沈下量が大きくなる傾向に加えて、混合土層内に発生する亀裂の幅が極端に狭くなった。(3)画像解析結果から、落し戸を沈降させると、ベントナイト混合土層内の亀裂が発生する位置の上方部ではせん断変形をするが、下方部では剛体として変位している現象が確認された。(4)大型現場模型実験から、ベントナイト混合土層下の局所沈下幅が増すにつれて混合土層下面付近から亀裂が発生してそれが上方へ進展した。そして、局所沈下をする深さが深いほど現象の進行が早かった。(5)表面に現れた亀裂幅が2mm以上になると、ベントナイトの吸水膨張機能が発揮されず、遮水機能が損なわれることとなった。(6)厚さ50cmのベントナイト混合土層の許容沈下量は50mm程度と判断された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・室内実験に関して、厚さを変えたケースとベントナイト混合土層の変形に対する補強を目的したジオネットを敷設したケースに対する落し戸・浸透実験を行うことができ、それらの影響を検討することができた。 ・屋外大型模型実験では、当初計画していた大型基礎沈降実験装置を使用する案ではベントナイト混合土層の締固めが十分に行われないことが心配されたため、屋外の採石場敷地を借用して模型遮水層を築造して実験を行う方法に変更した。すなわち、あらかじめベントナイト混合土層下の支持層の一部に溝を掘って砂を敷き、ベントナイト混合土層を敷設した後にその砂を撤去して局所沈下を生じさせた。この方法によってある程度の成果を得たが、ベントナイト混合土層が拘束されていない前面(観測面)方向に変形・崩壊するという問題があることもわかった。 ・平成23年度に成果を得ることができなかったベントナイト混合土層変形時の画像解析に関して、前年度に購入しておいた新品のアクリル板を加工して用いたことにより、質の良いビデオ画像を得ることができ、亀裂発生近傍における土塊のせん断ひずみを評価することができた。すなわち、肉眼で亀裂を観測できるときの計算せん断ひずみは15~20%であることが確認された。 ・浸透実験終了後のベントナイト混合土層中の含水比分布は、表面3cmまでと亀裂に沿う位置では約24%であり、ベントナイト混合土層底部では締固め含水比17%から殆ど変化していないことが、昨年に続いて確認された。 ・遮水性能を確保できる厚さ50cmのベントナイト混合土層の許容局所沈下量は50mm程度であろうことが見出せたので、今後、その力学的簡易計算式を導くことが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
・室内落し戸・浸透実験に関して、陽イオンを含む擬似浸透液(CaCl2溶液)を用いて、亀裂発生状況・遮水性能評価を行う予定である。関連して、溶液濃度が締固めたベントナイト混合土の膨潤性・遮水性に与える影響を評価する要素試験も行う予定である。 ・屋外での層厚50cmの大型模型ベントナイト混合土層に対して、溝の深さとジオネットの種類を変えた局所沈下・浸透実験を、平成24年度に続いて実施する予定である。特に、ベントナイト混合土層が局所沈下によって変形するときに前面(観測面)方向へ倒壊しないような工夫を行い、昨年度より実験精度を向上させたいと考えている。また、局所沈下幅を広げるときの作業精度にも工夫を施す予定である。 ・画像解析に関して、平成24年度は主に室内落し戸実験のビデオ画像を解析したが、平成25年度は室内実験に加えて屋外大型模型実験のビデオ画像(平成24年度撮影分を含む)も解析する予定である。なお、現場模型実験に関しては、解析用のマーカーをベントナイト混合土層前面にどのように設置するかが大きな問題となるので、この点を早急に検討する予定である。 ・平成23年度~平成25年度の室内と屋外の実験結果を検討・評価して、許容局所沈下量を評価する力学モデルの構築を行う予定である。また、効果的な対策工法の提案も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
・学外で行う厚さ50cmのベントナイト混合土層に対する局所沈下・遮水性能評価実験実施のため、砕石砂・ベントナイト・セメント・鋼材・ジオネットなどの材料の購入費に490,000円、学生の謝金に104、500円、大学から現場への機材運搬のための車両借り上げに50,000円、現場実験遂行(事前打ち合わせ、経過調査を含む)の際の旅費・宿泊費に72,000円を使用する予定である。 ・室内実験で用いる化学薬品や文房具等に29,609円を使用する予定である。 ・実験データ、特に画像データを保存するためのハードデスクに30,000円、解析補助の謝金に76,000円の使用も予定している。 ・研究成果を、富山で開催される地盤工学研究発表会とイタリアで開催される国際廃棄物埋立て会議で発表するので、そのための旅費382,000円と会議登録費150,000円を使用する予定である。 ・3年間の研究成果を取りまとめた報告書を印刷・製本するために130,000円を使用する予定である。
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