研究課題/領域番号 |
23560591
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
鈴木 素之 山口大学, 大学評価室, 准教授 (00304494)
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研究分担者 |
梅崎 健夫 信州大学, 工学部, 准教授 (50193933)
梅村 順 日本大学, 工学部, 講師 (70256816)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 地震 / 地すべり / 層理面 / リングせん断 / せん断強さ |
研究概要 |
地震地すべりは地層が交互に重なり合う境界面(層理面)をすべり面として発生することから,地震時の斜面安定性の検討では層理面の動力学特性の評価が大変重要である.本研究では層理面を人工的に作成すること,また動的載荷を受けたときの人工層理面のせん断特性を明らかにすることを主な目的としている. 本年度は,現有の繰返し載荷リングせん断試験機において,せん断層の砂の挙動を観察できるように改良した.主な改良点として,供試体のせん断面近傍に対して「その場観察」を可能とする透視型リングせん断容器を製作し,マクロズーム映像システムを構築した.また,次年度以降,せん断面の間隙水圧を測定するため,間隙水圧計を設置できる構造に改良した.これまでに試験機およびシステムの動作確認を済ませた.その際,試験機に関しては,供試体の間隙水をシールするための最適なOリングの選定,シールに伴うリング間摩擦の発生と軽減,映像システムに関しては,マイクロスコープのセッティングの微調整,ライティングの調節などの課題が明らかになった.しかし,いずれも簡単な工夫によって,概ね解決することができた.次年度の本格的な運用に向けた準備を完了したといえる. この他,人工層理面の片方となる固結土の作成に関して,砂にセメント等を微量添加・養生する方法について検討した.その結果,これまでに蓄積した実験技術を援用することにより,品質を確保した固結砂を作成することができ,その手順および試料の配合条件を確立することができた.また,セメント固結土の作成で使用する装置・器具を整備することができた.さらに,信州大学のリングせん断試験機を用いて,固結砂のせん断特性についても検討を行った.せん断速度を定常状態で徐々に増加させる試験を実施し,これまで蓄積したデータと比較・検討し,セメント固結砂に現れるせん断速度の影響を明らかにできた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,層理面のせん断挙動を直接観察できる透視型のせん断容器の開発,せん断面付近の砂の挙動をズームアップして高画質で観察できる映像システムの構築に概ね成功した.また,層理面を人工的に作成する技術の確立とその技術で試作した固結砂の高速せん断試験を実施し,取得したデータの比較・検討により作成法の妥当性ならびに固結砂におけるせん断速度の影響を明らかにすることができた.なお,岩手県等の地震地すべり地において現地調査や現場試験を予定していたが,東日本大震災の影響のため断念した.次年度は諸事情を考慮しつつ実現に向けて検討したいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,層理面を再現した固結土と非固結土を貼り合せた供試体に対して,動的載荷リングせん断試験を数多く実施して,せん断試験結果および層理面の観察結果から,貼り合わせ供試体の破壊の進展状況,層理面で発揮される動的せん断強さ,破壊時の間隙圧の発生状況等を明らかにしたいと考えている.その他,現場調査により,実際の地震地すべり地の土質特性を明らかにし,人工層理面の再現性を現場の諸情報から検証したいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費としては,間隙水圧計の導入を最優先としているが,実験の高度化によって,試験機・システムの追加改良が必要になる場合も想定されることから,設備備品に一定の費用を使用したいと考えている.その他,現地調査,資料収集,研究協議,成果公表のための旅費,また試薬・ろ紙などの消耗品として研究費を使用したいと考えている.
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