研究課題/領域番号 |
23560592
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
根上 武仁 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30325592)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 化学的地盤改良 / 強度低下 / 軟弱地盤 |
研究概要 |
本研究計画では,セメントや生石灰による化学的地盤改良を施した際に,改良強度の低下が一部に認められるのはなぜなのか,という点に着目している。当該年度は,海成粘土である有明粘土に生石灰を加え,締固めない方法による一軸圧縮試験用供試体を作製し,所定の条件で養生したものの一軸圧縮強さを調べた。また,沖積粘土の成因の違いが,固化材による改良強度低下におよぼす影響も考慮し,非海成粘土である蓮池粘土についても同様の試験を実施した。また,化学的地盤改良については,深層混合や浅層改良,ダンプトラックへの積載のための安定処理など多くの種類があり,目的や用途によって供試体作製方法が異なってくることも考慮し,本研究計画での対象領域を整理して図化した。 一軸圧縮試験用供試体の養生に際しては,JGS 0821-2000に準拠したが,地盤環境の変化を考慮して蒸留水中,20g/lの塩水中,希硫酸0.01N 溶液中に供試体を沈めての養生も併せて行った。蒸留水については改良柱体施工後の地下水位を考慮し,塩水は沿岸部堤体への海水侵入を考慮している。また,希硫酸を用いたのは,沖積粘土の酸化による硫酸生成を考慮したことによる。なお,環境庁告示第46号に基づき,一軸圧縮試験用供試体と溶液の比率(固液比)は1:10とした。固化材の量が改良強度の変化におよぼす影響も考慮し,貧配合と高配合条件で作製した供試体についても同様の試験を実施した。 一連の試験結果から,生石灰で強度改良した海成粘土は非海成粘土よりも大きな強度低下を示すことが明らかとなった。また,浸潤水は塩水の場合が最も強度低下することが明らかとなった。貧配合改良条件のもとでは含水比を要因とした一軸圧縮強さの値に大きな違いは認められず,高配合改良条件のもとでは,含水比が高い場合に一軸圧縮強さが低下し,低い場合に強度が増加する傾向が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,生石灰およびセメント添加による強度改良効果と,地盤環境の変化による改良強度の低下について明らかにするため,有明粘土および液性限界状態に調整したカオリン粘土を準備し,所定の養生条件で養生した供試体について,力学試験,化学分析,微視的土構造の観察を実施する計画であった。カオリン粘土による供試体作製については,一部遅れがあるが,有明粘土に関する試験項目はほぼ予定どおりに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は平成23年度に引き続き,カオリン粘土も対象に検討を進める。固化材についても,生石灰に加えてセメントを用い,改良強度の発現と低下についての検討を行う。試験項目は基本的には前年度と同様とし,改良一軸圧縮強さ,微視的土構造の検討,化学分析を実施する。化学分析については,X線回折試験を行っているが,強度の増加・低減に影響を及ぼす物質の特定には至っていないことから,より詳細なX線回折試験とEPMA等の他の分析についてもあわせて検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費についてはカオリン粘土やプラモールドなどの消耗品で32万円,旅費については国内の学会参加費用と研究打ち合わせで10万円,人件費・謝金については,土質試験補助で10万円,その他の項目については科学分析費用等で28万円の支出を計画している。なお,前年度繰越金の2315円についえは,物品購入費用に充てる予定である。平成25年度の直接経費総額は90万円であり,間接経費は27万円である。
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