研究課題/領域番号 |
23560593
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
吉田 望 東北学院大学, 工学部, 教授 (50405891)
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研究分担者 |
規矩 大義 関東学院大学, 工学部, 教授 (70251759)
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キーワード | 繰返しせん断特性 / 大ひずみ / K0応力状態 / 単純せん断 / 等価線形化法 / 液状化解析 / 液状化解析 |
研究概要 |
本研究は,大きな地震を受けたときには地盤は大きなひずみを発生することになると考えられるが,その際の応力-ひずみ関係を設定することにある。このために,実地盤の状況を反映できるような実験方法を考案,実験するとともに,その際にもちいることお 大きく,二つの流れで研究を行った。 一つは昨年に引き続いての研究で,実地盤の初期応力状態(K0応力状態)を再現した状態で,実地盤の地震時の境界条件,すなわち側方の変形が生じない条件下で,繰返しせん断試験を行った。その結果,この条件で行われた繰返しせん断試験は従来の方法,すなわち,初期を等方応力状態とし,繰返し軸力を与えることで近似的に繰返しせん断特性を求める方法に比べると,剛性が小さめになるという結果が得られた。これが,初期せん断による影響なのか,他の要因なのかは今年の研究課題となる。 もう一つは,大地震時の地震応答解析の精度を検証することにより,地震応答解析における応力-ひずみ関係などの必要性を論じることである。このため,約300の地盤の柱状図を集め,地震応答解析を行った。地震応答解析は当然地震動の性質により異なると考えられるので,11の直下型地震と海溝型の地震の地震記録を用いて解析を行った。そして代表的な地震動指標により精度を比較したところ,精度は地震動指標に取り方により大きく異なることがわかった。また,実務で良く用いられる等価線形解析は最大加速度を平均50%程度大きく評価するが,最大速度,計測震度,SI値などはそれほど変わらないこと,最大変位は過小評価することなどがわかった。一方,全応力地震応答解析と有効応力に基づく液状化解析を比較したところ,全応力地震応答解析は,最大加速度,最大速度,計測震度,SI値,最大変位などのほとんどの指標を大きく過小評価することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね予定通り進行している。ただ,K0圧密した試料の試験は少し遅れている。これは,これまでにない試験ということで,色々な問題が起きているからである。K0圧密後,せん断応力を加えるための装置は試料の側方変位を物理的に固定する方法と加力制御によりひずみを押さえる方法がある。前者は,地震後の加力方法としては好ましいが,一方では特定のK0しか実現できないという問題がある。後者は,任意のK0状態を実現できるが,側面全体の変位を試料全体にわたって拘束することができない。本研究では実地盤で想定される範囲のK0状態を想定しており,K0を変化させる必要があるので,後者の試験法を用いている。すると側方の変位は側方として平均としてひずみが発生しないという,ややゆるめの条件に置き換えざるを得ない。このため,中空ねじり試験器を用いたケースでは最終的に試料の中間部がふくれるという変形を示した。一方,単純せん断装置を用いた方法では等体積の制御は人力で行っているので,時間が非常に多くかかることになった。また,両者で変形特性の性質も若干異なる。その理由を求めることが課題として残っている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であり,これまでの研究のまとめを行う。 解析法の精度に関しては,比較するべき地震動指標の数を増やし,解析法の適用性の一般的な傾向を見つけるようにする。 次に,大ひずみ時の応力-ひずみ関係は,従来になかった新しい領域であり,既往の試験法だけでは不十分である。しかし,工学の実務を考えたとき,すぐに新しい試験法が一般化するとは考えにくい。そこで,大きいひずみ領域までを考えたときの実験結果を基に,従来の試験法で行われた結果から大きいひずみ領域の挙動を追うことができるかという検討を行う。このために,多くの試験データを集め,整理する。 地盤が地震を受ける際の挙動を得る際の応力-ひずみ関係を得る方法については,達成度の所でも示したように,少し検討を要する事項が生じている。その原因を明らかにし,従来の試験法との違いを明瞭にする。 最後に,これまで行ってきた研究をまとまったものから国際会議や査読誌に投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用で大きなものは,研究成果の海外発表である。また,次年度は研究の推進法策で書いたように,膨大なデータ整理が必要となるので,学生アルバイトをこれに当てる予定である。また,最終年度ということで,研究をまとめる旅費などにも用いる。さらに,報告書作成費用や,まとめるに際して必要となった消耗品などにも使用する。
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