研究課題
大地震時の地盤の著しい非線形挙動を解析で把握するための研究を行った。まず,従来の地震応答解析の精度評価が曖昧であったことから地震動指標を整理し,レーダーチャートを用いて精度を評価する方法を提案した。そして,過去の研究で用いられた286サイトの地盤に,内陸型,海溝型あわせて11の地震波を作用させ,等価線形解析と非線形解析を行いその結果を比較した。最大値に関しては変位を除き,等価線形解析の方が大きな値となる一方,被害に対応する指標では両者はそれほど多くなく,等価線形解析が設計や被害解析では安全側の評価であるという意味で,適用性があると結論づけられた。一方,同じ地盤で有効応力解析と全応力解析を比較したところ,全応力解析が変位を除くほとんどの指標で非常に大きな値となり,安全側ではあるが過大評価になっている可能性も指摘された。次に,従来の地震応答解析でよく用いられている双曲線モデルとRamberg-Osgoodモデルの適用性を,関東圏95サイトで採取された482の繰返しせん断試験結果を用いて評価したところ,従来,パラメータの数が多く,減衰特性の実験値に近いと考えられてきたRamberg-Osgoodモデルの方が大ひずみ域では適合性が悪いことが分かった。これを踏まえ,基準ひずみとせん断強度のみをパラメータとするシンプルで適用性の広いモデルを提案した。最後に,実地盤の初期応力状態と地震時の応力の載荷状態を再現するための試験方法を考案し,K0応力状態で地震動を受けた際の挙動を調べた。試験法として定体積法,定圧法と名付けた二つの方法を試したところ,挙動にかなりの差が発生した。また,従来の等方応力状態では同じとされていたフレッシュテストとステージテストを比較したところ,両者で差が現れた。この問題がK0の 影響のみに依存するのかについては今後の検討課題となった。
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