研究課題
本研究では,前々年度のダムの洪水調節機能の向上,前年度のダムの「弾力的運用」による利水機能の向上の可能性を示したことに続き,ダムの弾力的運用を合理的に判断する方法論を提示した.ダムの弾力的運用とは,洪水に対する安全性を確保しつつ利水容量の増量を図る運用のことである.その際必要となる洪水への安全性確保には数値予報モデルから得られる予測情報を用いた事前放流操作方法による対応を考えた.具体的な結果は以下のとおりである.1) 北海道空知川流域の多目的ダムである金山ダムをモデルケースとし,雨量の予測値と実績値の相関係数を評価指標とし,予測LT(リードタイム)を最大限延長した場合の予測雨量の精度を検証した.2) 積算予測雨量を用いたダムの事前放流操作方法を提案し,過去の洪水事例及び平常時の運用に適用し,洪水に対する安全性の検証及び本手法の妥当性を検証した.とくに長時間先の流入量を予測することによって弾力的運用のさらなる向上策が可能かどうかを検討した.3) 弾力的運用によって確保される水量を小水力発電に利用した場合に得られる発電量を試算した.以上の検討結果により,予測雨量を用いた事前放流で治水面での安全性確保がなされれば,ダムの弾力的運用による活用容量の増量が可能であり,それを利用した下流河川の水環境改善と小水力発電の実施等付加価値のあるダム管理が可能であることが示された.本研究の内容は,今後のエネルギー政策だけでなく,既存施設の有効活用にも資するものと考える.
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土木学会論文集B1(水工学)
巻: 70 ページ: I_1471, I_1476
巻: 70 ページ: I_355, 360
ダム技術
巻: 319 ページ: 38-44