研究課題/領域番号 |
23560603
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
中山 恵介 北見工業大学, 工学部, 教授 (60271649)
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研究分担者 |
榎本 浩之 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (00213562)
佐々木 正史 北見工業大学, 工学部, 教授 (10322885)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | メタン / 成層場 / 内部波 / 寒冷地域 / 地球規模 / 環境変動 |
研究概要 |
気候変動の影響を受けた災害が多発し,生物多様性が地球規模で失われつつあり,温暖化要因である二酸化炭素,メタン,一酸化二窒素などが大きく影響していると言われている.メタンは二酸化炭素に比較して大気中での分解速度が大きく10年程度の寿命であるが,温室効果は二酸化炭素の約25倍であり,北極圏からのメタン発生量は地球全体の1/4から1/3であることが報告されている.北極圏では,永久凍土から融解する貧酸素水が富栄養化および微生物によるメタン発生を促進すると考えられており,アラスカ地方が北極圏の中では低緯度に位置することから,永久凍土の融解の影響を受けた閉鎖性水域が多く存在していると考えられ,気候変動の影響を受けやすい地域であると言える.そこで本研究では,気候変動の影響も考慮し,北極圏における永久凍土の融解による富栄養化とメタン発生量の推定を目指し,閉鎖性水域における物質循環,貧酸素水塊の発生機構解明を目的とする.初年度は,地球規模での環境変動の影響を調べるために,GCMを利用した将来予測の可能性について検討を行った.湖沼におけるメタン発生と大気中への放出に大きく関わっている要因として風による効果が考えられることから,GCMを利用した風に関する再現性の検討も行った.寒冷地域での研究が主であるが,信頼できるデータが最も多く存在する東京湾周辺を対象として,MRI-AGCM3.1SやH,LおよびCMIP3から8つモデルを利用してその検討を行った.その結果,将来における風の予測可能性について論じることができ,今後,CMIP5等のデータを利用することにより,より高精度なプロジェクションが可能であることが分かった.さらに,現在投稿中であるが,湖沼におけるメタン発生に関するモデル化を行い,これまでに考慮されていなかった効果により,湖沼内でメタン濃度が変化している可能性を示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに研究は進行している.特に湖沼におけるメタン発生については,予想以上の成果を上げることができ,ある程度モデルの作成に関して目途が立った.一方で,観測については少し遅れているが,来年度,重点的に進める予定である.アラスカ訪問も来年度予定しており,共同研究者と共に観測を実施する計画を立てることができている.よって,総合的に考え,今年度は予定通りに研究を遂行することができたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
湖沼におけるメタン発生に関するモデル化の目途が立ったこともあり,今後は観測を中心とした研究を遂行する予定である.8月後半もしくは10月初旬にアラスカを訪問し,共同研究者の観測と共に現地を視察し,観測を実施する.観測は国内の網走湖を対象として実施する予定であり,水温チェーンを利用した湖沼内における鉛直プロファイル計測を行う.網走湖は北海道内でも群を抜いてメタン発生量が多い湖であり,本研究の対象として適していることを記しておく. モデルについては,1次元モデルによるメタン濃度の鉛直分布の再現に関する検討が終了しており,来年度は3次元モデルによる再現を試みる予定である.具体的には,3次元計算モデルにおける詳細なモデル化を検討する.その際,アラスカ大学フェアバンクス校の研究者とも連絡を取り,モデル化に関する助言を得る予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
アラスカ訪問,学会での成果発表,および観測費用として利用する.50万円を越える物品の購入は予定していない.
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