メタンは,二酸化炭素に比較して大気中での分解速度が大きいが,地球温暖化ガスとしての温室効果は二酸化炭素の約25倍である.そのメタン発生量は北極圏からのものが地球全体の1/4を占めていると報告されている.北極圏は,地球規模での環境変動の影響が大きく出ることが報告されており,永久凍土の融解により発生する富栄養化した湖沼からのメタン発生量が急激に増加する可能性が指摘されている.そこで本研究では気候変動の影響も考慮し,北極圏における永久凍土の融解による富栄養化とメタン発生量の推定を目指し,閉鎖性水域における物質循環,貧酸素水塊の発生機構解明を目的とする.初年度および2年目で地球規模での環境変動の影響を調べるためにGCMを利用した将来予測の可能性について検討を行い,寒冷地域のメタン発生湖沼の代表として網走湖を対象とし,メタン発生のモデル化を行った.最終年度では,メタン発生速度に関する水温,硫酸イオン濃度,酸素濃度を制限要因とした室内実験を実施し,モデル化を終了した.その結果,硫酸イオン濃度よりも溶存酸素濃度がメタン発生量に大きく寄与していることが解明された.
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