研究課題/領域番号 |
23560604
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
清水 義彦 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70178995)
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キーワード | 水工水理学 / 礫床河川 / 河道内樹林化 / 砂州 / 砂州掘削 / 低水路管理 |
研究概要 |
本研究では,中小洪水を比高の高い砂州の内部に導く砂州掘削路を設けることにより,洪水撹乱を誘発して,①砂州上の樹木生育基盤の消失(樹林化の抑制),②砂州・低水路河床の大きな高低差(横断比高)の解消,③低水路線形の変更(屈曲した低水路流れによる水衝部形成の是正)をねらうことで低水路管理につなげようとしている。 研究対象河川である渡良瀬川礫床区間では,平成18年度以降に複数箇所の砂州内において掘削路の設置を行ってきた.すなわち,(a)赤岩地先狭窄部下流の中州の掘削路,(b)桐生大橋地先左岸砂州の掘削路,(c)昭和橋地先右岸砂州の掘削路,(d)松原橋地先右岸砂州の掘削路,(e)緑橋地先砂州の掘削路である.また,屈曲した低水路蛇行区間の水衝部対策として(f)錦桜橋河道直線化整正(流路に張り出した砂州の掘削と蛇行低水路の埋め戻し)を実施した.これらの地点においてこれまでの洪水経験が周辺地形変動に与えた影響を横断測量結果,レーザープロファイラ-測量結果をもとに整理し考察した.その結果,(e)を除くいずれの砂州掘削も効果的に横断比高の解消,樹林化抑制を促していることが現地調査から確認できた.しかしながら細粒分の流出に伴って砂州掘削路河床の粗粒化が進行し,洪水かく乱の影響が鈍化してきている.そこで,掘削路内の横侵食から樹木生育基盤のかく乱の誘発を検討した.掘削路においてトリガーを設置して交互砂州,複列砂州を形成させ,これによる地形変化を河岸浸食モデルを取り込んだ平面2次元河床変動数値解析から検討し,掘削路内流量規模,掘削路幅,縦断勾配および河床材料をパラメタとして効果的な樹木生育基盤のかく乱を生む砂州掘削のあり方を検討した.また,砂州上での河床低下・河床上昇による樹木の流失・侵入イベントを取り込んだ平面2次元河床変動数値解析から砂州上の樹林化の進行と比高拡大の素過程を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,国土交通省渡良瀬川河川事務所が実施した複数箇所の砂州掘削(砂州内に流水を引き込む掘削路設置)において,出水に伴う樹林化砂州の地形かく乱についてモニタリングを行ってきた.とくに,平成23年,平成24年には2回の中小規模出水が生じ,この洪水インパクトに対する砂州掘削路およびその周辺基盤の応答(かく乱)を捉えることができた.これによって,本研究の目的である,①砂州上の樹木生育基盤の消失(樹林化の抑制)が確認され,②砂州・低水路河床の大きな高低差(横断比高)の解消についてもその傾向を捉えることができた。また,③平面2次元河床変動計算による砂州掘削路周辺の基盤変化予測を行うための数値モデルにおいては,砂州と植生の侵入・破壊に特徴づけられた低水路形成に焦点を絞って検討し,現況の河道特性を定性的に説明することができた.さらに,④出水を掘削路から砂州内に導き,樹木生育基盤のかく乱の誘発と砂州河床材料を低水路に掃き出すことを目的として,掘削路に交互砂州にもとづく蛇行流を形成させて河岸浸食を誘発する検討を行っている.以上の検討から,本研究の目的である効果的な樹木生育基盤のかく乱を生む砂州掘削のあり方を提案する準備が整い始めている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は研究最終年度であるため,これまでの研究を総括し,①砂州掘削路・周辺の物理基盤と植生の侵入状況の現地調査及び樹林化抑制の効果評価,②平面2次元河床変動計算による砂州掘削路周辺の物理基盤変化予測と掘削路規模・基盤撹乱の関係に関する考察,③掘削路の河岸侵食の促進による砂州基盤撹乱の誘発に関する検討,④砂州の基盤撹乱による低水路への土砂供給,低水路線形への影響に関する検討を取りまとめ,砂州掘削による樹木生育基盤撹乱の誘発と低水路管理のあり方を検討する.そして,砂州掘削路による洪水のダイナミズムを利用した砂州基盤の撹乱手法は砂州の樹林化抑制として,また,低水路における流砂の健全性を回復する手立てとして有効であることを示し,河道特性が変質した現況河道における新たな河道管理手法として提案する.
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度において残額が生じた理由は予定していた調査研究旅費が下回ったためである.これは検討対象河川以外の事例研究調査を行う予定であったが,樹林地の洪水かく乱を受けた適当な河川がなかったためである.25年度は研究成果のまとめに力点を置くため,これまで検討してきた数値シミュレーション結果の考察を中心に検討を行う予定であり,前年度の残額と合わせ,パソコン,データ処理等の経費に充てる予定である.
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