研究課題
本研究では,中小洪水を比高の高い砂州の内部に導く砂州掘削路を設けることにより,洪水撹乱を誘発して,①砂州上の樹木生育基盤の撹乱 (樹林化の抑制),②砂州・低水路河床の大きな高低差(横断比高)の解消,③低水路線形の変更(屈曲した低水路流れによる水衝部形成の是正)をねらい,洪水のダイナミズムを利用した新たな河道管理手法の提案を行うものである.利根川水系渡良瀬川礫床区間において複数箇所の砂州内において掘削路の設置し,その効果評価を検討した.以下に得られた知見をまとめる.1)いずれの掘削路においても①の効果が認められた。砂州上では低水路に比べ河床材料が細粒であるため,掘削路に導かれた洪水流によって河床材料の移動が容易に生じる.とくに植物生育基盤を構成する細粒分(砂・シルト)が流出することで植物の侵入・定着を遅らせている.2)一部の掘削路では上流端付近から下流にかけて河床低下傾向にあり,これは低水路からの土砂供給が少なく,一方掘削路河床からの細粒分輸送が活発に起こるため流砂の非平衡性から河床低下が生じたものと推測された。砂州の河床低下は残存根茎の流失を伴う有意な地形撹乱であり,また②の効果である横断比高の解消につながることを示した.3)③については,平成25年9月16日出水による撹乱を通じ,(c)での掘削路でその効果を検討した.掘削路が主流化するにつれて,分担流量が増大して掘削路の側岸侵食が誘発され,横侵食により砂州の撹乱効果が認められた.同時に,掘削路の主流化に伴って屈曲化した低水路の深掘れ部が砂州により埋め戻されて,水衝部が緩和される効果も発現した.4)掘削路内での横侵食に伴って砂州が形成される.そこで掘削路においてトリガーを設置して交互砂州,複列砂州を形成させ,その影響を河岸浸食モデルを取り込んだ平面2次元河床変動数値解析から検討し,樹木基盤の撹乱を誘発する水理条件を求めた.
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土木学会論文集B1(水工学)
巻: Vol.70 ,No.4 ページ: I_1045-I_1050
Advances in River Sediment Research (Proc.12th ISRS)
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