研究課題
衛星リモートセンシングによる有義波高の測定においては,水位と水面勾配の結合確率分布が用いられ,従来の手法では観測域の水位分布をGauss分布に従うものと仮定している.しかしながら,波の非線形性の影響が強い場合は,この仮定は成立しない.波の非線形性により変化するskewnessやkurtosisを考慮した分布推定法としてGram-Charlier級数を用いる方法があるが,この方法では確率密度の値が負となる欠点がある.そこで本研究では,波の非線形性とskewnessやkurtosisとの関係について考察し,それらを考慮したGram-Charlier級数に代わる新たな結合確率分布推定法を提案した.結果,以下の事柄が明らかとなった.(1)現地波浪において,水位のskewnessとkurtosisの間に正の相関関係があることが認められた.一方,室内実験の風波には負の相関関係が見られた.また,波形勾配と水位のskewnessとの関係,および最大波高と有義波高の比と水位のkurtosisとの関係について,共に明確な相関関係があることが分った.(2)風波の水面勾配のskewnessとkurtosisの間には負の相関が見られ,またskewnessは,風速の増大と共に小さくなることが明らかとなった.すなわち,波が風により風下方向に傾く傾向が見られた.(3)指数関数の積で表わされる結合確率密度関数の推定法を開発した.この方法は,確率密度の非負値性を満たし,かつ高次モーメントの影響が適切に考慮される利点がある. (4)室内実験で観測された風波の水位と水面勾配の結合確率分布より,水位,水面勾配の両方について分布の非対称性が見られた.その実測値との比較により,高次モーメントを考慮した結合確率分布推定法は,実測値に見られる分布の非対称性を精度良く表わすことが分かった.
2: おおむね順調に進展している
水位および水面勾配のskewnessおよびkurtosis等の高次モーメントを用いて,水位・海面勾配結合確率分布を算定する手法を開発し,実験結果および過去に行われた現地データとの比較も行い,適切なる結果を得ている。ただし,高次モーメントの値がGauss分布のその値と大きくことなると,安定した結果が得られないこともあることが判明したので,その改良が必要である。
当初,ブイの傾斜角を計測して水面勾配を計測する予定であったが,ADCPを用いて4方向の水面の位置を計測する考えのもと,現地観測を実施する予定である。その結果を整理して,改良した理論値と比較・検討する予定である。
現地観測を行うので,傭船料30万円,高速応答360度傾斜計(3台),タートル工業社製, TUSB-L01ANG,(3台×50千円)15万円,学会出張旅費20万円,その他消耗品費である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
土木学会論文集 B2 (海岸工学)
巻: Vol.67, No.2 ページ: 151 - 155
土木学会論文集B3(海洋開発)
巻: Vol.36 ページ: 859 - 864