研究課題/領域番号 |
23560609
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
禰津 家久 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (30109029)
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研究分担者 |
山上 路生 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80362458)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ラングミュアー循環流 / ステレオPIV / ガス交換 / 大規模2次循環 / 風波 |
研究概要 |
既往研究では界面ガス交換・輸送現象と風波に起因するラングミュア循環流は,独立に各分野で研究されてきたが,実水域環境場の炭酸ガスの輸送特性や分布予測を正確に評価することは学術面だけでなく社会的にも大きな関心があり,研究代表者の禰津がこれまでの知見と実績をもとに,禰津研究室(水理環境ダイナミクス分野)の特進研究課題として準備してきた.風波界面流れは気液界面が時間的に変形しながら流れと相互作用する複雑なマルチフェイズ現象であるから,室内実験や数値計算が容易ではなく,特にラングミュア循環流のような3次元性が大きい流れとガス輸送の関係性に関する解明はほとんど進展していないのが現状である.そこで本研究は高精度な流体計測技術を駆使して主として次の内容に着目して鋭意研究し,実水域に十分適用できる炭酸ガスの交換輸送を予測するモデルを構築した.1)マルチカメラによる高精度ステレオPIVシステムを開発して,時空間的に変化する自由水面境界も含めた全水深領域における流速成分の3次元構造を計測し,風波界面で発生する組織渦,ストークスドリフト,縦渦構造を定量評価することでラングミュア循環流の非定常な発生特性を解明した.2)複数のDOメーターを導入して界面極近傍を含めた溶存ガスの時間空間分布を計測した.ラングミュア循環流による水面や底面領域での集積および発散の影響を解明した.特に,ラングミュアセルの形成パターンによるガス濃度分布の偏在過程や界面ガス交換速度への寄与特性を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラングミュアー循環のステレオ計測に成功した。室内の風洞水路においても風波に誘引される大規模な2次循環流が発生することを明らかにした。さらに瞬間の水面形状も同時に計測して、ラングミュアー循環流の生成プロセスを高精度な実験データに基づいて詳細に考察できた。これらの成果を土木学会論文集に投稿し、掲載された。また同様の流れ場においてガス交換特性についても実験的に解明し、この成果を水工学論文集にて発表した。このように当初の計画通り研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
LIFは溶存物質の濃度や熱などのスカラー質の時間空間分布を計測する手法として最近注目されている.禰津らも,これまでにLIFとPIV/LDAを併用することによって開水路キャビティ流れ(土論2005年11月)や植生キャノピー流れ(土論2009年8月)の乱流輸送特性を解明した.この実績をさらに発展させて高精度な2色蛍光LIFによるガス輸送濃度計測システムを構築する.炭酸ガス濃度はpH値に応答する.ここではpH応答するキニーネと応答しないローダミン6Gの2種類の蛍光染料を用いて,レーザー蛍光誘起されたシート光を高速度カメラで撮影後,色フィルターで分離し,輝度分布の相違から炭酸ガスの濃度分布が時系列として算定する.LIFによる炭酸ガス濃度計測の空間検定のために溶存炭酸ガスメーターを2台主要備品として計上している.さらにLIF用の高速度カメラをステレオPIVシステムに組み込んで同期制御する3次元流速場と炭酸ガス濃度の同時計測システムを開発する.これによって既往研究では困難であった瞬時の濃度分布と流速分布が同時に得られ,渦相関法によるガス交換速度の高精度評価が可能となる.
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次年度の研究費の使用計画 |
界面付近では極めて高速な流れが発生する。これを適切に計測するためにダブルパルスタイプのレーザー光源を設備備品として申請予定である。またステレオカメラを水路と一体化して移動調整できるように、特注のカメラベースについても申請予定である。
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