研究課題/領域番号 |
23560610
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
鬼束 幸樹 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20293904)
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キーワード | 魚道 |
研究概要 |
ダムや堰等の河川横断構造物によって生じる水位落差は,魚の遡上および降下を妨げる.そのため,水位落差を分割あるいは滑らかに接続し,魚類の遡上および降下を可能にする魚道の設置が必要となる.我が国の既設魚道の9割以上は階段式魚道である.階段式魚道を設計する上で,適切な勾配,プール間落差,プール長,プール水深等の情報が必要となる. 階段式魚道のプール部分における適切な幾何学形状は解明されていない.プール部分の形状を構成する要素の一つに,プール水深が挙げられる.2005年に国土交通省河川局が発表した「魚ののぼりやすい川づくりの手引き」にはプール水深に関しては,「プール水深が深すぎると鉛直方向の渦流が発生し,魚が遡上方向を見失う場合があるため留意する.また,浅すぎると減勢効果が低下するため,適切な流況及び流速に留意する.」と記されている.しかしながら,推奨される定量値は示されていない. H24年度は片側切欠き付階段式魚道において,プール水深および流量を系統的に変化させて,アユの遡上特性を解明した.その結果,以下の知見が得られた. (1)プール水深の減少に伴ってアユの遡上率が高くなった.これは和田の発見と同様である.ただし,流量が少ない時および多い時に遡上が困難になることが判明した.(2) アユの遡上が誘発される要因として,①アユの定位場所と上流側切欠きとの距離が近いこと,②魚向が上流側切欠き方向を向いていること,③各魚の魚向が揃っていること,の3条件が必要なことが解明された.(3) プール水深の増加に伴いアユの降下率が低下することが解明された.(4) 魚群と下流側切欠きまでの最小距離が近いほど降下率は高くなる.これは,下流側切欠きとの距離が小さくなると上流側隔壁から下流側隔壁へと流れる高速流に乗り,下流に流されているからである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のタイトルは「河川魚の突進速度の解明と組織乱流理論を用いた遡上率の高い魚道の設計値の提案」である.本年度はタイトル後半の「遡上率の高い魚道の設計値の提案」を行った.「研究実績の概要」で記載したとおり,遡上率の高い水深を解明したため,「おおむね順調に進展している」と判断される.
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は片側切欠き付階段式魚道において,プール水深および流量を系統的に変化させて,アユの遡上特性を解明した.その結果,遡上に適した水深が定量的に解明できた. 本年度は水深以外の幾何学形状を変化させて引き続き,魚の遡上実験を行い,遡上に適した階段式魚道の幾何学形状を定量的に解明する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
階段式魚道において,幾何学形状を変化させる上で木材やペンキなどの消耗品が必要となる.また,実験に使用する魚の維持費として,水槽や餌などが必要となる.一方で魚の挙動を解析するためにコンピュータが必要となる.これらの研究に協力いただく人への謝金も必要となる.研究打ち合わせおよび成果発表のために旅費も必要となる.
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