河川にダムや堰等の河川横断構造物が建設されると,水位落差が生じ,魚類等の遡上や降下が困難になる場合がある.そのため,水位落差を分割あるいは滑らかに接続し,魚類の遡上および降下を可能にする魚道の設置が必要となる.国内において最も採用例の多い魚道形式は階段式である.しかし,既設の階段式魚道において,魚の遡上が困難なものが存在する.魚の遡上が困難になる理由として,魚道内の流況が適切でないことが挙げられる.魚道内の流況を決定する最も大きな要因は,魚道の幾何学形状である.本研究では,魚の遡上しやすい階段式魚道の幾何学形状を実験的に解明することを目的とした. 階段式魚道の下流から2番目のプール内の様々な位置に仕切り板を設置した.高さ0.8m,幅0.25mの仕切り板をプール縦断方向の中央の位置に固定し,横断位置のみを4ケース変化させた.また,仕切り板を設置していないケースについても実験の対象とした.また,隔壁において切欠き部を流下方向に投影した領域をNotch area,それ以外の領域をPool areaと定義した.下流から2番目のプールに平均体長が80mmのオイカワを30尾挿入し,切欠き部の越流流速が体長倍流速で9倍となるように3L/sの流量を与えた.目視で定常を確認した後,切欠きに設置した遡上防止用ネットを除去すると共に,プールの側壁および上部に設置した2台のカメラで30fpsで30分間の撮影を行なった.撮影後,オイカワの遊泳位置を10sごとに解析すると共に,遡上数をカウントした. 階段式魚道のプール内に仕切り板を設置することにより,オイカワの休憩場所の制御が可能であることが判明した.また,オイカワのプール内の瞬間遊泳位置が上流側切欠きに近い程,遡上率が向上することが判明した.
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