研究課題/領域番号 |
23560611
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
内田 龍彦 中央大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00379900)
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キーワード | 一般底面流速解析法 / 非平衡流砂運動 / 小規模河床波 / 急変流 / 河川構造物 / 浅水流の仮定 / 現地スケール / 三次元流計測 |
研究概要 |
河床変動予測に関する技術的課題は,流砂運動を引き起こす底面近傍の流れの解析法に関するものと河床変動を引き起こす流砂運動の解析法に関するものに分けられる.前者に対して,静水圧分布等の浅水流の仮定を用いない新しい準三次元解析法である,一般底面流速解析法を構築した.後者に対して,流砂の運動方程式に基づく非平衡流砂量式を構築した. 本年度得られた主要な研究成果を以下に示す. 盛土構造物を越流する急変流場において,本解析法は従来の二次元解析法では解析できない法肩近傍の天端の水深の現象,法尻付近の水深の増加,およびこれらを生じさせる圧力分布を再現できることを示した.また,下流水深の変化に伴う越流構造物背後の跳水形態の変化を説明することができることが分かった.また,非平衡流砂量式を応用した堤防侵食解析法は既往の実験で得られた堤防裏法面の侵食過程を説明できることを示した. 一般底面流速解析法と非平衡流砂量式を用い,水理条件によって変化する小規模河床形態の解析法を構築した.本解析は水理条件の変化によって砂堆から平坦河床を経て遡上反砂堆へ河床形態が遷移すること再現し,流砂量が極端に大きくなる反砂堆の条件で水深の計算結果(抵抗評価)に課題がある以外では,実験の流砂量と水深(抵抗)を概ね再現することができた. 現地スケールの局所三次元流の詳細流速データを取得するため,本研究ではADCPを用いた河川水衝部における局所流の流速分布計測法を開発した.従来のADCP流速計測法では計測できない,流速が局所的に大きく変化する箇所や,水深の大きな箇所において,本計測法では精度よく計測出来ることを示した.常願寺川の現地実験における本計測結果と解析結果を比較し,現地スケールの複雑な流れに対する解析法の妥当性と課題を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では精度の高い洪水時の河床変動解析法の構築を目的としている.課題は大きく二つに分けられる.一つは流砂運動を引き起こす底面近傍の流れの解析法,もう一つは河床変動を引き起こす流砂運動の解析法の構築である.前者について従来の水深積分モデルでは静水圧分布等の浅水流の仮定を用いてきたため,河川構造物近傍の局所的な三次元流へ適用できない限界を有していた.本研究では浅水流の仮定を用いない新しい準三次元解析法,一般底面流速解析法を開発してきた.本年度までに従来の解析法では再現することが困難であった構造物を越流する急変流,橋脚周りの馬蹄形渦,複断面蛇行流れの解析に対する解析法の適用性を明らかにした.また,現地スケールの流れに対して解析モデルの検証データを得るために,ADCPを用いた局所三次元流れと河床形状の測定法を開発し,解析法を検証した.この結果,現地スケールの解析においては,底面境界条件や乱流モデルなどにおいて未だ課題を有することが明らかとなった.後者については流砂の運動方程式を用いた非平衡流砂量式を開発し,これと一般底面流速解析法を用いることで,狭い水路において発生する様々な小規模河床波を再現することを可能とした.これらの成果は,従来解析することが困難であった河床変動現象であり,本研究では洪水時の精度の高い河床変動解析を行うための技術レベルを向上させている.このため,本研究二年目として順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに開発した一般底面流速解析法は室内実験への適用に比べて,礫床河川の水衝部の三次元流れの解析では再現性がよくなく,その理由の解明が課題として残された.実験室スケールの流れと比較すると河川水衝部の流れはスケールが大きいことによってレイノルズ数が大きくなることと,実験室に比べて広い粒度分布による複雑な底面境界条件を有するため,底面近傍の流れの非平衡性が強くなると考えられる.特に,現在底面境界では薄い渦層内で流速と渦度分布が平衡状態にあると仮定して導かれており,底面の境界条件である壁法則について再検討する.具体的には大きな河床材料が底面に存在する場合の抵抗や渦度の生産項の評価方法について,国内外の研究成果を収集し,実験結果を用いて解析法を詳しく検討する. 一方河床変動解析法については,一般底面流速解析法と流砂の運動方程式を用いた非平衡流砂量式により,狭い水路で生じる様々な小規模河床波を計算すること可能としたが,三次元河床波への適用性については検討しておらず,解析法の三次元現象への適用性については不明である.そこで,水路幅が広い場合の解析法の適用性と妥当性について検討する. また,本解析法を流れの三次元性が重要となる現地洪水流・河床変動解析へ適用し,解析法の妥当性と適用限界についても検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果を発表し,研究の進展のために国内外の最新の研究動向の情報を取得するため,学会参加費と旅費を使用する.底面流速解析法の妥当性の検証や非平衡流砂モデルの構築のためには,底面近傍の流れや乱流状態,多くの砂粒子の運動の素過程等のモデル化が必要である.既往文献調査,既往実験データ整理,流砂研究情報収集のための各種消耗品を使用する.また,解析モデルを構築するために計算機のメモリー,ハードディスク増設,及びデータ保管,データ整理用アプリケーションソフト類などのコンピュータ関連消耗品を使用する.
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