研究課題/領域番号 |
23560613
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研究機関 | 明石工業高等専門学校 |
研究代表者 |
神田 佳一 明石工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (60214722)
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研究分担者 |
渡部 守義 明石工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00390477)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 水工水理学 / 自然現象観測・予測 / 環境技術 / 環境生態学 / 洪水 |
研究概要 |
本研究は、近隣の播磨地域で産出される石礫や間伐材などを用いた木杭列護岸による河川整備を明石市内の小河川に適用することを目的とし、その構造設計指針及び維持管理手法の開発を目指すものである。平成23年度の研究成果の概要は以下の通りである。 1. 都市小河川の河道特性や水質等に関する資料収集及び現況調査:兵庫県明石市周辺を流域とする明石川及び喜瀬川について、河道の断面特性や水理量、既設の護岸の様式と諸元、流域の土地利用、植生や水生生物ならびに災害事例に関する資料を収集し、これまでの同流域での水質等の実態調査の結果と合わせて、都市域小河川における木杭による護岸構造物の現況と治水・利水・環境保全上の問題点を明らかにした。 2. 木杭列護岸の水理機能と河床変動特性及び護岸の変形・破壊過程に関する模型実験:明石川水系で既に施工されている木杭を用いた透過性低水護岸の中から、水理機能上安定性が懸念される木杭列護岸様式を抽出し、縮尺模型を用いて透過性護岸の減勢効果と護岸周辺の河床変動特性及び護岸自身の変形過程について実験的に考察した。流水の作用による護岸材料の変形・流失過程については、護岸基礎部の局所洗掘や裏込め材の抜け出し量と変形特性との関係、護岸破壊時の限界条件について考察した。 3.明石川・喜瀬川水系における水質及び水生生物の生態に関する現地調査:透過型低水護岸の環境水理機能と生物環境機能を評価するため、県管理の明石川や喜瀬川水系で木杭を用いた透過型低水護岸の施工区と非施工区を含む試験調査領域を設置し、水温や溶存酸素量、クロロフィル、窒素、リン酸等の栄養塩に関する水質調査と水生生物の分布調査を実施した。これらの結果から木杭護岸周辺の環境水理機能評価と生物指標を用いた生物生息環境の機能評価を行い、護岸を構成する間伐材や石礫が魚類などの水性生物の生息環境に与える要因を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の内、平成23年度の達成目標とした実施計画については、概ね順調に進展している。明石市周辺の河川の現況調査については、当初その対象を谷八木川、瀬戸川及び明石川としていたが、河川改修がほぼ終了している谷八木川及び瀬戸川については、木杭を用いた護岸の施工事例が少ないことからこれらを除外し、流域内に多くのため池と古代遺跡を有し、それらの環境整備が進められている喜瀬川を新たに調査対象とした。河川地形、水質及び水生生物の調査については、予定通り定期的に実施されており、その結果を用いた河川生態環境の評価法については概ね構築できている。木杭列護岸の水理機能に関する模型実験では、明石川水系に多く施工されている巨石と木杭を組合わせた代表的な低水護岸構造を抽出し、平水時及び洪水時の周辺河床及び護岸の変形特性について実験的に考察を行っており、これらの研究成果は国内の学会及び研究紀要等で発表している。
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今後の研究の推進方策 |
1.木杭の腐食耐久性と施工方法に関する実験的検討:水浸と乾燥の繰り返しによる腐食に対する木杭の耐久性について,材質や表面処理法の異なる数種の木杭材料を流水中に設置した実験を行い、水深や流速等をパラメータとして腐食の程度や進行速度と木杭強度の関係を明らかにする。また、実河川においても同様の現地調査を行い、腐食に対する耐久性の高い木杭材料の選定と施工方法を提案する。 2.木杭列護岸周辺部の流れ及び河床変動特性に関する数値解析:木杭列護岸周辺の流れ及び河床変動特性に関して、護岸背面の浸透流を考慮したモデルを用いて数値シミュレーションを行い、実験結果を検証するとともに浸透流速や護岸構造がその安定性に及ぼす影響度について考察する。これにより、護岸材料の変形・流出に伴う境界形状の変化と周辺河床の洗掘過程を同時に解析する。 (3) 木杭列護岸の水理特性及び河床変動特性の定式化と現地河川への適用:透過性護岸に関する水理特性や環境水理機能の生物に対する効果、周辺河床の洗掘特性、護岸の変形・破壊特性と予測モデルの提案など個々の研究内容の基礎的な部分を定式化する。 (4) 木杭列護岸の環境機能の評価と水質浄化法に関する検討:木杭による透過性護岸の水質浄化等の環境機能を明らかにするため、BOD 等の水質指標との関連性及び水質浄化法としての有用性について考察する。また、近年の森林整備とからんで間伐材の再利用が問題となっており、伝統河川工法などへの間伐材の利用,近隣の石礫材料などを用いた場合の経済性などについても合わせて検討する。 (5) 研究のまとめ:以上の研究成果を総合して,木杭列護岸周辺の流れや河床変動特性及び水質浄化機構を明確にし、その水理及び生態環境機能を評価するとともに、水生生物の生息環境からみた合理的な設計法及び維持管理手法の指針を提言する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度においては、対象河川の水質・生物調査を継続すると共に、木杭の腐食耐久性に関する実験及び木杭護岸周辺の河床変動に関する水理実験を行う予定である。必要な研究経費としては、対象とする河川の護岸構造を実験水路上に再現するための石礫材料やアクリル板、アルミ部材及び間伐材料等の資材、ビデオテープやCD等のデータ記録媒体、水質試験用試薬や投網・タモ網など魚類調査具等の消耗品を計上している。 また、旅費としては、明石川及び喜瀬川等の調査・観測費用と資料収集のための旅費、成果発表のための国内旅費及び外国旅費である。成果発表は、日本高専学会年会講演会、土木学会全国大会年次学術講演会、河川技術シンポジウム及び国際水理学会(IAHR)主催の国際会議等への参加・発表を予定している。 謝金としては、現地測量、採水、生物調査その他の現地調査と水質試験、水理模型実験等の補助及びデータ整理に3名の研究協力者の雇用費を予定している。
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