本研究では,洪水時における流況と土砂動態のモニタリング技術の高度化を目的として,ADCP(超音波ドップラー流速計)とRTK-GPSを用いた掃流砂量およびADCPの反射強度を用いた浮遊砂量推定技術を提案し,実洪水に適用することにより,その有効性について検証した. 最終年度までに,洪水時において流況と掃流砂速度,ウォッシュロードが卓越する条件における浮遊砂量の計測が可能であることを確認した.また,ADCPで計測した流量と推定した浮遊砂量の関係は,全国一級河川の観測結果の範囲内にあり,本手法が概ね妥当であることがわかった. さらに,最終年度には,Bagnold型の掃流砂量式で得られた掃流砂量手法を提案し,一般に用いられている芦田・道上の式で求めた値に比べて4倍程度大きくなることを明らかにした.二次元河床変動解析手法では河床砂が活発に移動する場合の摩擦速度が実測鉛直流速分布から推定される値に比べて過小評価されることを示した. また,浮遊砂量の鉛直分布を計測するための水中採水器の改良を行い,肱川の洪水に適用した結果,水深約5m,水深平均流速2.3m/sの流況において,水面下3mまでの採水を行い,浮遊砂量の推定精度を向上させるための検証データを得ることができた. 最後に,ADCPを用いた移動観測における流量と掃流砂量の実用的な観測手法の構築を目的として,四万十川,仁淀川および肱川で実施した定点観測と曳航観測による水深平均流速,掃流砂速度および摩擦速度のデータについて,変動係数CVを指標とした計測精度評価を行った.その結果,流量と掃流砂量の同時計測のためには,定点観測と横断移動観測を組み合わせ,各計測値の変動係数CVをリアルタイムでモニタリングしながら,計測時間を最小限に留め,計測地点数を多くする手法が実用的であることを示した.
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