研究課題/領域番号 |
23560618
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
田村 亨 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80163690)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 地域航空 / 地域連携 / 航空ネットワ-ク |
研究概要 |
平成23年度は、以下に示す2つの研究を行った。 (1)欧米の先進事例とわが国の都市間交通の実態分析から、座席数80-100人の小型航空機材を用いた地域航空ネットワ-クの適用対象を抽出した。具体的には、欧米の事例について、数多くの研究成果のレビュ-と海外研究者へのヒアリングにより行なった。 (2)マクロな視点から、北海道と九州の航空ネットワ-クを想定して、自治体連携による「複数空港の共同経営」と「複数自治体の航空機共同保有」が国民の社会的厚生にどのように影響するかを分析した。これと(1)の分析から地域航空ネットワ-ク導入のシナリオを作成した。分析の前提は、複数の自治体が共同して整備の負担を負うことによ、民間事業者の経営環境は改善されて、交通サービスが提供される点である。損益分岐点を引き下げることによって、民間事業者には利潤機会の拡大というインセンティブがあり、非効率な運行に対する歯止めになる。同時に、地域住民は合理的な価格で交通サービスを利用できるため、厚生水準は上昇する。この厚生水準を計測するためのモデル開発を行なった。シナリオ作成では、地域ブロック内で持続可能な地域航空ネットワ-クが形成されるまでのロ-ドマップづくりから行なった。この際、次年度以降のリスクの抽出も行った。10年先のシナリオは2段階からなり、最初の段階は、現有ネットワ-クに国内の小型多頻度路線を加えて行く段階であり、機構設立時の自治体のリスク負担が問題と指摘された。次の段階は、ブロック内の経営であり、空港経営やアジアの成長路線の取り込みの段階とされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初計画は、次の3つの段階から成るものであった。 (1)欧米の先進事例とわが国の都市間交通の実態分析から、座席数80-100人の小型航空機材を用いた地域航空ネットワ-クの適用対象を抽出する。(2)マクロな視点から、北海道と九州の航空ネットワ-クを想定して、自治体連携による「複数空港の共同経営」と「複数自治体の航空機共同保有」が国民の社会的厚生にどのように影響するかを分析する。これと(1)の分析から地域航空ネットワ-ク導入のシナリオを作成する。(3)航空路線というミクロな視点から、(2)のシナリオ(ロ-ドマップ)に応じたリスク分析を行い、地域連携による持続可能な航空ネットワ-ク形成の可能性・実現性の評価を行う。これより、自治体の投資に対応してどの路線が追加的に維持でき、その効果がどのくらいかを明示する。 平成23年度は、このうちの「(1)」と「(2)の一部」に関して研究を進める予定であった。研究は予定通り進捗しており、現在までの達成度は、3年間の研究期間の完成予定を100とすると、40%までに達している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、航空路線というミクロな視点から、平成23年度に作成したシナリオ(ロ-ドマップ)に応じたリスク分析を行い、地域連携による持続可能な航空ネットワ-ク形成の可能性・実現性の評価を行う。これより、自治体の投資に対応してどの路線が追加的に維持でき、その効果がどのくらいかを明示できる。 具体的な研究は、モデル構築が中心であり、需要モデル、航空事業改善モデル、空港経営改善モデル、モデル統合による評価モデル構築の4つである。新規性の点からは、空港経営改善モデルの構築が一番難しく、これにより「空港経営の実態把握」と「共同経営による自治体の財政改善効果」を分析する。前者については、研究代表者も参加した航空政策研究所の先行研究(今後の空港運営のあり方について、2009)があり、これを発展させる。後者については、旭川空港を対象に空港改善を把握してあり、これを複数空港の共同経営に拡張する。さらに、地域連携主体に着目して、地方空港の存在効果を含めた経済効果を把握する予定である。最後の、モデル統合による評価モデル構築は、研究最終年度(平成25年度)に向けたパイロットモデルの構築となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費の使用計画は、デ-タ入力謝金が20万円、東京工業大学の屋井鉄雄教授、神戸大学の竹林幹雄教授とのモデル構築に関する打ち合わせが、それぞれ4回で60万円。研究対象である北海道と九州におけるデ-タ収集旅費が30万円と予定している。その他はコンピュ-タ-のハ-ドメモリ-などで10万円を計上している。
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