研究課題/領域番号 |
23560618
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田村 亨 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80163690)
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キーワード | 地域航空 / 地域連携 / 航空ネットワ-ク |
研究概要 |
平成24年度は、以下に示す2つの研究を行った。 ①平成23年度に引き続き、マクロな視点から、北海道と九州の航空ネットワ-クを想定して、自治体連携による「複数空港の共同経営」と「複数自治体の航空機共同保有」が国民の社会的厚生にどのように影響するかについて、平成23年度に作成した「地域航空ネットワ-ク導入のシナリオ」に沿って分析した。 ②航空路線というミクロな視点から、①のシナリオ(ロ-ドマップ)に応じたリスク分析を行った。 このうち、②の分析は本年度から新規に行った分析であり、ミクロ分析によるネットワ-ク形成の可能性・実現性の評価に必要となる4つのモデル(需要モデル、航空事業改善モデル、空港経営改善モデル、モデル統合による評価モデル)のうち、本年度は、需要モデルと航空事業改善モデルを完成させた。 地域航空事業は優れて地域の問題であって、地域がそのリスクの一部を負わねばならない。重要な検討課題は、航空機共同保有機構が実施する支援対象の範囲とそれに応じた参加者のリスク負担である。機構と運航事業者間のリスク分担(整備不良、遅延、スト等)については、契約により事前に定めるが、運航計画と負担のバランスについては、事前・事後で調整する仕組みが必要となる。考慮される要因は、運航路線の航続距離、国際線の有無、滑走路延長等の条件および既存の使用機材の買い替えや新規調達のタイミング等である。こうした需要サイドの条件を取り込んだモデルが構築できた。また、運航事業者の調達・整備コストの縮減の程度などを取り込んだ航空事業改善モデルが構築できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初計画は、次の3つの段階から成るものであった。 1.欧米の先進事例とわが国の都市間交通の実態分析から、座席数80-100人の小型航空機材を用いた地域航空ネットワ-クの適用対象を抽出する。 2.マクロな視点から、北海道と九州の航空ネットワ-クを想定して、自治体連携による「複数空港の共同経営」と「複数自治体の航空機共同保有」が国民の社会的厚生にどのように影響するかを分析する。これと①の分析から地域航空ネットワ-ク導入のシナリオを作成する。 3.航空路線というミクロな視点から、②のシナリオ(ロ-ドマップ)に応じたリスク分析を行い、地域連携による持続可能な航空ネットワ-ク形成の可能性・実現性の評価を行う。これより、自治体の投資に対応してどの路線が追加的に維持でき、その効果がどのくらいかを明示する。 平成24年度は、このうちの「2.の完成」と「3.の一部」に関して研究を進める予定であった。研究は予定通り進捗しており、現在までの達成度は、3年間の研究機関の完成予定を100とすると、70%までに達している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、研究の最終年度として、航空路線というミクロな視点から、地域航空ネットワ-ク導入のシナリオ(ロ-ドマップ)に応じたリスク分析を行い、地域連携による持続可能な航空ネットワ-ク形成の可能性・実現性の評価を行う。これより、自治体の投資に対応してどの路線が追加的に維持でき、その効果がどのくらいかを明示する。 ミクロ分析によるネットワ-ク形成の可能性・実現性の評価に必要となる4つのモデル(需要モデル、航空事業改善モデル、空港経営改善モデル、モデル統合による評価モデル)のうち、需要モデルと航空事業改善モデルは平成24年度に完成させた。よって、平成25年度は、空港経営改善モデル、モデル統合による評価モデルを完成させる。 需要サイドの条件、運航事業者の調達・整備コストの縮減の程度が明確になれば、その段階でさらに詳細なシミュレーションを実施し、路線維持あるいは路線新設等による地域経済の活性化への影響を計測する必要がある。本研究では、リスク評価モデルとしてリアルオプション法を用いる。 分析上の課題は、コンピュ-タ・アルゴリズムの作成である。確率過程をコントロ-ルする問題として、最適条件を求める(ブラウン運動の数値解析)方法に技術的工夫が必要である。この解法に、遺伝的アルゴリズムを用いることを検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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