研究課題/領域番号 |
23560620
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
川上 洋司 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10152927)
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研究分担者 |
三寺 潤 福井大学, 産学官連携本部, 研究機関研究員 (80585711)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 地方鉄道 / 事後評価 / 価値認識 |
研究概要 |
研究対象とするえちぜん鉄道の再生後約8年間の経緯・取り組みとその実績に関する各種情報を収集するとともに、他の同様の再生地方鉄道(北勢線、貴志川線等)の視察、ヒヤリングを実施し、本課題の研究を進める上での基礎的情報を体系的に取りまとめた。 併せて、関連既存研究の収集と整理を踏まえて、再生鉄道の事後評価の視点と分析フレームを整理し、そのために必要な既有関連アンケート調査や沿線各駅周辺の土地利用ストック及びフロー(福井市建築確認申請(1997-2010年度)データ等から成る総合データベースをほぼ作成し終えた。 研究の出発点にかかる上記必要事項を確定した上で、研究初年度にあたる平成23年度では、当初の研究計画に従って、以下3つの具体的課題について研究を行った。(1)利用者アンケート調査(関連自治体と共同実施、開業直後の既存調査データも活用)結果に基づき、利用者の利用形態や意識面からえちぜん鉄道利用の定着化・利用増の要因を明らかにした。再生後の利用者増の直接的原因を事業者や関連自治体の取り組みと関連付けて利用者の意識面から解明できた点は事後評価の出発点として意義ある成果といえる。(2)過去14年間の福井市建築確認申請データの分析に基づいて、再生鉄道が土地利用に及ぼした影響の予備検討として、鉄道駅へのアクセス条件と都市開発動向の関連性を把握した。(3)沿線住民へのアンケート調査を実施し、住民の意識面からえちぜん鉄道が地域にもたらした各種価値の内容と程度を体系的に把握するとともに、現行の公的財源支出(運営コストに対する助成分)に対する受容意識を明らかにした。これらの分析は、本課題(事後評価)の主要部分を成すものであり、(3)についてはその成果を取りまとめて学会に投稿した(査読中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が「えちぜん鉄道活性化連携協議会」の座長を務めることとなったため、研究を進めるにあたって当初想定していた鉄道事業者、沿線関連自治体担当者等関係者との共同体制が平成23年度の早い段階から確立でき、事後評価にかかる関連情報、各種データの収集と整理、あるいは本研究の出発点となる再生後8年間の総括作業をスムーズに進めることが出来た。 そうしたこともあって、本研究の課題である事後評価の重要な視点の一つとして設定した「沿線住民の意識から見た再生鉄道の各種価値」把握については、当初の計画より前倒しで実施し、今後の研究展開上も意義ある成果を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度については、当初計画通り(一部調査については前倒しで実施)に進めることが出来たので、その成果を踏まえつつ平成24年度についても計画通りに推進する予定である。具体的には、沿線地方自治体にもたらされている公益施策代替性効果(交通分野のみならず福祉、環境、観光分野へのクロスセクター・ベネフィット)の具体的内容及び程度を自治体関係者へのアンケートを通して把握すること、さらに沿線立地事業者がえちぜん鉄道によりもたらされている効果(外部経済効果)の存在を事業者アンケート調査に基づいて実証することに重点を置いて研究を進める予定である。 なお、平成23年度に未使用経費が生じたのは、再生鉄道の事例として調査を予定していた「貴志川線」(和歌山市)への視察・ヒヤリングを、北勢線のある桑名市で開催された地方鉄道サミットに参加することで代替(貴志川線再生に関する講演・関係者へのヒヤリング実施)できたためである。他の経費については計画通りに執行した。未使用経費については、平成24年度弘前市で開催される都市計画学会での研究成果発表(投稿中)旅費に充当する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
成果発表のための学会出張(弘前市)等旅費が当初計画(20万円)以上の支出となる見込みであるが、この不足分については昨年度未使用額を充当することにし、他の経緯費については当初計画通り(物品費5万円、人件費・謝金15万円、その他10万円)に使用する予定である。
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