期間延長したH26年度は、主に研究成果公表と研究成果全体のとりまとめを行った。 本研究は、地域で支える仕組みで再生された「えちぜん鉄道」を対象として、地方鉄道としての存在意義を種々の点から実証的に明らかにすることを目的とし、以下の成果を得た。 ①沿線住民は「えちぜん鉄道」に対して、直接的利用価値だけでなく、利用の有無に関わらず様々な間接的利用価値、非利用価値(存在価値等)を高く認識していること、このことを背景に運行等にかかるコストへの公的財源支出に対しても十分な受容意識を有していること、さらには「駅周辺に住む(住んでいる)」ことに対しても、駅そのものの多面的価値認識を背景に「愛着感」、「帰属感」を有する層が多く存在し、「住環境満足度」や「定住意向」も高いこと等を明らかにした。②地域の総合行政を担う沿線自治体は、直接関わる交通分野の施策面だけでなく、まちづくり、福祉、教育、観光等周辺分野においても「えちぜん鉄道」の存在を前提としていたり、関連付けている施策が存在すること、自治体担当者の意識においてもそれぞれの分野の施策推進において「えちぜん鉄道」の存在価値を認識していること、つまりクロスセクター・ベネフィットが存在していることを定性的ではあるが明らかにした。③外部的波及効果としての沿線(駅周辺)への住宅等都市活動立地については、福井市内における小地区単位の人口密度特性(程度及び推移傾向)、フローとしての都市開発動態(建築確認申請状況)を見る限り、現状においては一部の駅周辺を除いて顕著な集積傾向を示すまでには至っておらず、「えちぜん鉄道」の中長期的な利用促進・定着化と存在意義向上を図るには、都市開発の計画的誘導といったまちづくりとの連携が不可欠であることを示した。 以上、地方鉄道の多面的存在意義の実証結果より、公的主体がさえる生活関連資本として位置づけうると結論付けた。
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