研究課題/領域番号 |
23560625
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
榊原 弘之 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (90304493)
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研究分担者 |
塚井 誠人 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70304409)
鈴木 春菜 山口大学, 理工学研究科, 助教 (00582644)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 討議分析 / 定量的分析 |
研究概要 |
1.市民参加型の計画プロセスにおける討議データの収集:実際の市民参加型の計画プロセスにおいて,ワークショップにより討議の音声データを収集した。ワークショップの討議テーマは、環境にやさしい交通のあり方である。討議を重ねることによる議論の深化を把握するために、同一メンバーが複数回討議するような事例の異なる開催回のデータを入手した。ワークショップは計5回開催されたが、研究では第2回、第3回、第4回の計3回のワークショップのデータを収集した。また、参加者の違いによる話題の変化を分析するために、3つのグループの討議データを収集した。それらの音声データのテキストデータへの変換作業も実施した。2.実験的討議データの収集:仮想的な環境下で、同一の計画課題に関する実験的討議を複数回実施した。討議テーマは、大学へのカーシェアリング導入である。大学生12名を被験者として、6名で1グループを形成した。そのうえで、各グループでそれぞれ全3回の討議を行った。3.討議データの分析手法の開発:討議データを分析する手法を開発した。具体的には、「テキストデータの統計分析により、討議における主題を特定する手法」、「主題に関する議論の深まりの程度の定量的指標」、「主題が転移してゆく動的な過程の分析手法」、「第三者の視点から見た討議の評価手法」を開発した。さらに、討議の社会的な受容性の評価を行うために、メディアのテキストの文脈と討議の話題の類似性の程度を評価するための手法の開発も行った。収集した討議データと、開発した手法を用いて、実際の分析も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を達成するための研究計画において、平成23年度は、1.市民参加型の計画プロセスにおける討議データの収集2.実験的討議データの収集3.討議データの分析手法の開発の3点を実施するとしていた。そのうち1.については、実際のワークショップの討議データを入手しており、テキストデータへの変換作業もすでに完了している。また2.については、討議実験を実施の上、討議状況のビデオ画像データをすでに収集済みである。さらに3.については、研究計画で挙げていた(A)テキストデータの統計分析により,討議における主題を特定する手法、(B)主題に関する議論の深まりの程度の定量的指標、(C)主題が転移してゆく動的な過程の分析手法、(D)非言語的コミュニケーションの分析手法、(E)第三者の視点から見た討議の評価手法、のうち、(A)、(B)、(C)、(E)については分析手法を開発しており、一部これらの分析手法を用いたデータ分析も実施済みである。以上のように、研究目的を達成するための研究計画がほぼ予定通り進捗していることから、おおむね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、以下の分析を行う。1.実際の討議データの分析:平成23年度に開発した分析手法を,実際の討議データ(音声データをテキストデータ化したものと,ビデオの映像データ)に適用し,分析を行う.これにより,開発手法の妥当性を検証する.また,同一メンバーが複数回討議する事例の分析を通じて,議論の深化の程度を分析する.2.討議過程の評価手法の開発:1.の分析では,討議の主題の特定や,議論の深まり,主題の遷移課程などを分析する.一方,計画プロセスを運営する立場からは,討議が計画策定のために有意義なものであったかを評価することも重要である.ここでは,主に議論の深まりを示す指標を活用して,討議過程の評価手法の開発を行う.さらにその手法を実際の討議過程に適用する.平成25年度は、有意義な討議が行われるためのファシリテーション手法の提案と,コンフリクトの分析・調整手法と組み合わせた,市民参加型の計画プロセスの運営技術の提案を行う.1.討議のファシリテーション手法の提案:討議過程の評価結果(平成24年度の2.)を基に,有意義な討議を可能とするためのファシリテーション手法について提案を行う.2.統合的な市民参加型の計画プロセスの運営技術の提案:本研究課題で得られた知見を取りまとめるとともに,研究代表者がこれまでの研究で提案している,コンフリクトの分析手法や,当事者間のコンフリクト調整方策と組み合わせることにより,統合的な「市民参加型の計画プロセスの運営技術」を提案する.
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次年度の研究費の使用計画 |
1.実際の討議データの分析では、分析のために,記録媒体等の消耗品費が必要となる.また研究打ち合わせのための国内旅費が必要となる.2.討議過程の評価手法の開発では、地域計画に関する書籍と資料収集のための国内旅費が必要となる.なお,24年度は成果発表を行うための国内旅費,国外旅費,研究成果投稿料,論文別刷料を必要とする.
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