研究課題/領域番号 |
23560630
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
赤羽 弘和 千葉工業大学, 工学部, 教授 (60184090)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 交通シミュレーション / 交通管制システム / 交通状況短期予測 / オンライン自動キャリブレーション / 車両感知器データ / Kitter法 / Kalmanフィルタ / 交通管理 |
研究概要 |
交通量-速度の散布図に、前処理として画像工学の二値化処理を施した上で、二峰性速度分布の閾値選定法に、Kitterの方法を適用し、渋滞検出閾値(臨界速度)を自動設定・更新するアルゴリズム(Kitter+法)を開発した。首都高速道路3号線に適用し、渋滞状態が発現しないため、速度分布が一峰性の断面でも、適切な臨界速度を設定できることを確認した。 都市高速道路のJCTの接続路(渡り線)に設置された車両感知器も対象としたバイアス補正係数の最小二乗推定アルゴリズムを、カルマンフィルタ適用して定式化した。首都高速道路3号上り線おびその下流側のJCT部を経て都心環状線の合流部までを含む区間に、偏り補正係数の自動設定・更新を、実感知データを対象として実施した。その補正結果をビデオ実地観測により検証し、観測値が非渋滞側に限定されたが、その範囲では10%程度の過小感知を、3%程度の過大推計とはなるが所要の精度まで補正できることを確認した。 臨界速度の設定結果を適用し、同時刻に渋滞が検出された地点を空間的に連ね、ボトルネックを自動判定できることを確認した。次いで、ボトルネック地点が実際に渋滞の先頭となっている状態(臨界状態)での感知交通量を、Kitter+法で非渋滞と判定された感知器データに、さらに同法を適用することにより、抽出できることを確認した。 JCT部わたり線の各断面における感知器データに前述と同様にKitter+法を2回適用し、JCT合流部における臨界状態データを抽出できることを確認した。首都高速都心環状線の複数のJCTを対象として、本線交通量を説明変数、合流交通量(いずれも乗用車換算値)を被説明変数とする単回帰モデルにより、合流比率をモデル化した。実台数から乗用車換算台数への変換係数(大型車当量)を、当該回帰モデルの相関係数最大化により、合理的な値に設定されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感知交通量のバイアス補正は、適用対象が首都高速の一部路線にとどまっている。また、ビデオデータによる検証も一断面の非渋滞状態にとどまっている。しかし、補正係数の推定プログラムは完成しており、入力データを整備すれば目標は達成できると考えられる。 ボトルネック容量の設定においては、大型車当量の自動最適化により、乗用車換算値により容量値を設定する部分が未完である。しかし、JCT合流部における最適化の実績があるため、目処は立っている。 その他は、ほぼ計画通りに進捗していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)交通量-密度関係の設定: 交通状況が非渋滞時は上流から下流へ、渋滞時は逆方向に伝播することを考慮しつつ、隣接する感知器設置断面で構成される道路区間への流出入交通量と区間内の存在車両台数との関係を最小二乗推定することにより、交通量-密度曲線を推定・更新する。したがって、上記(2)による偏り補正後の感知交通量を、入力データとすることが安定的な推定に必須である。また、推定の際には、上記(1)で各車両感知器の設置点に設定した渋滞検出閾値を適用する。この推定・更新法の詳細は、対象とする交通シミュレーションモデルにおける交通の進行アルゴリズムに依存する。本研究では、首都高速道路のオンライン実時間シミュレーション用に開発中のRISEを対象とする。 (2)ETCと感知交通量データに基づく時間帯等別OD表の設定: 既存研究を参考として、ETCデータをサンプルODデータとし、感知交通量を発生・集中交通量およびスクリーライン交通量として、時間帯別にOD表を推定・更新するアルゴリズムを開発する。自動車起終点調査の調査実施日を対象として上記推定・更新を行い、調査結果と比較・検証する。 (3)JCT等分流比率と整合した経路選択パラメータの設定: 各JCTにおける分流比率は、各車両の経路選択行動の集積でもある。そのため、RISEの経路選択モデルのパラメータの一つである各JCTに対するダミー変数を、選択行動モデルにおける選択肢ダミー項としてとらえ、各JCTにおいて感知交通量から算定される分流比率に基づいて合理的に設定する手法を開発する。推定・更新されたJCTダミー変数値と幾何構造等との関係を、併せて分析する。 (4)入路流入交通量の予測パラメータの設定: 上記(2)のOD表に基づいて予測される入路交通量を、感知交通量に合わせて補正するための自己回帰モデルの係数を、アダプティブ推定法を適用して推定・更新する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.平成23年度のデータ処理、キャリブレーションアルゴリズム開発用PCに関しては、ビデオ画像処理ソフトウェアが最新OSに未対応だったため、同年度における購入を見送った。しかし、現状では別の処理方法で最新OSをインストールしたPCでも適用できるため、H24年度に繰越金で購入する。キャリブレーションアルゴリズムの処理は拡張カルマンフィルタで非線形処理を各道路区間で実施等、大量のデータ処理を必要とするため、専用PCの2台購入費として410千円を計上している。2.平成23年度に一時予算額の7割執行を前提とするよう指示があったため、研究代表者の国際会議出張は見合わせ、研究協力者のみとした。これと検証用データ取得のためのビデオ調査実施およびデータ処理が計画より遅れて持ち越した分等を合わせた繰越金額99万円は、H24 年度の検証用データ取得のためのビデオ調査実施およびデータ処理に追加支出する計画である。3.その他は当初計画通り、消耗品費として15万円、研究代表者と研究協力者計2名の海外学会発表のための旅費80万円および学会参加費20万円、資料整理および分析補助の謝金として20万円を支出する計画である。
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