研究課題/領域番号 |
23560633
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
鹿田 正昭 金沢工業大学, 環境・建築学部, 教授 (50121249)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
本研究テーマである「準天頂衛星とGPSを用いたシームレス測位による地図の精度向上および更新技術の構築」を構成する研究プロセスから、前述した「リアルタイムGIS」(研究業績参照)の概念を用い、準天頂衛星「みちびき」のデータを用いて基盤地図情報の位置合わせおよび鮮度向上の検証をおこなう計画においては、SPAC(測位衛星利用推進センター)の利用実証実験に応募して次の2テーマで採択された。(1)基盤地図情報を含む電子地図の即時更新への応用 (2)インドア・アウトドアシームレス測位における精度検証。また、平成24年3月5日から3月9日にかけて日本海側としては初めてとなるLEX信号(センチメートル級)の実験を実施した。その結果、これまでの実験では高速移動(時速30km以上)では受信ができなかったLEX信号が、北陸自動車道金沢東インターチェンジから西インターチェンジまでの高速走行(時速80kmから時速100km)でも受信できることが確認された。 インドア・アウトドアのシームレス測位を検証するためのRFIDの基本性能の実験、RFIDのリーダー・ライターの実験(周波数およびタグの形状)から室内外実験などを通して、GNSSを補完するための位置データ取得特性について検証した。その結果、RFIDのみでは室内の位置の特定までは難しいことが判明したため、一般に活用されてるセンサーとの併用によりその範囲を狭めることが可能である知見を得た。今後はIMES(Indoor Message System)の併用により屋外ではGNSS、屋内ではRFIDおよびセンサーによるシームレス測位が可能であることを確認できた。 以上の研究成果から、高度空間情報社会の実現を促進させるための有効な手段の1つとして、空間情報技術とRFID技術の融合が必要であることが立証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SPAC(測位衛星利用推進センター)の準天頂衛星利用実証実験に応募して2テーマで採択されたこと、日本海側では初めてとなる実証実験を平成24年3月5日から9日の5日間にわたって実施できたこと。この実験から高速移動においてもLEX信号の受信ができることが確認されたこと、RFIDおよびセンサーを用いた室内での位置情報取得のための基礎的な実験を行い、それぞれの機器の基本的な性能および感知できる範囲などについて確認できたこと、などから当初の研究目的にについてはおおむね順調に進展していると思われる。これらの結果については、国際会議(ポーランド: APPROACH OF THE INDOOR AND OUTDOOR SEAMLESS POSITIONING BY USING RFID AND GNSS;MMT2011、台湾: REALIZATION OF ADVANCED SPATIAL INFORMATION SOCIETY BY USING RFID AND GNSS、ACRS2011)および国内での学会(屋内外シームレス測位実現のための位置情報取得方法の提案、日本写真測量学会)において発表している。 また、平成24年3月5日から9日の準天頂衛星(みちびき)実証実験が順調に実施できたことから、平成24年4月23日から27日の5日間にわたって再度北陸地方でのLEX実証実験の機会が与えられた。準天頂衛星(みちびき)のLEX信号補正情報は実証実験のため限られた範囲(おおむね200km四方)しか送信されず、実験は順番待ちとなっている。このような状況下で2カ月連続で実験の機会を与えられたことは、実証実験成果に期待できることが大きいことの証左であると考えられる。 以上のこととから、平成23年度における研究成果は「おおむね順調に進展している」との自己点検結果に至った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年3月5日から3月9日および4月23日から4月27日にかけて北陸地域を対象として実施された準天頂衛星LEX信号受信実証実験データを活用し、「リアルタイムGIS」による基盤地図の精度および鮮度向上の検証および「RFIDの活用による室内外のシームレス測位」の検証を行う。さらに、実証実験データとIMESを用いて室内外シームレス測位が実現可能であることを検証する。具体的には、基盤地図情報の位置合わせと鮮度向上の検証、RFIDの基本性能を調査するため、RFIDのリーダー・ライターの規格から室内外実験などを通して、みちびきおよびGNSSを補完するための位置データ取得特性についての検証を実施する。 基盤地図情報がリアルタイムに更新可能であることを立証するため、準天頂衛星を用いた基盤地図情報の即時更新に関する検証をおこなう。また、GNSSデータ補完のためのRFIDによる位置情報の検出をテーマとしてGNSSで検出不可能な場所の位置情報や歩行ナビを行うRFID活用のための実証実験をおこなう。さらに、GIS・GPS・RFIDをコラボレートしたユニバーサルマップの提案をテーマとして、基盤地図情報を想定したユニバーサルマップの試作および問題点の抽出をおこなう。 以上から、これまでの2回の実証実験に加えて準天頂衛星のLEX信号を用いた位置精度検証実験を実施し、GPSとの精度比較を示す必要がある。また、屋内測位についてもRFIDを用いて屋内の位置情報の計測を試みたが、他のIMES、Bluetoothなど他の機器を用いた計測を試みる必要がある。各機器によって測位精度は異なるが、エリア検出の場合は携帯基地局の電波の利用、ゾーン検出の場合は無線LAN、アクティブRFIDなどを利用し、ピンポイント検出の場合はパッシブRFIDなどを利用するといった状況に応じて使い分ける手法を確立していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
主たる実験が準天頂衛星からの受信や地上での実地測量になるため、設備備品費用については大型の機器(50万円以上)の購入予定はない。実地測量はすでに大学で準備しているトータルステーションを使用する。50万円以下の設備としてはIMES(室内におけるGNSS信号受信機)の購入を予定している。 国内および国内旅費については、国外での国際会議2回(オーストラリア:International society of Photogrammetry and Remote Sensing、タイ:Asian Conference of Remote Sensing)および国内の学会(秋田:日本写真測量学会秋季学術講演会)に関する費用を予定している。 謝金については大学学部生および大学院生に室内外での実験、準天頂衛星実証実験、現地測量、データ整理などに協力してもらうための費用を予定している。 その他については、学会参加費、実証実験のための移動車両のガソリン代金などに充てる予定をしている。
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