研究課題/領域番号 |
23560642
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
越後 信哉 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (70359777)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 溶存態有機窒素 / オゾン処理 / 触媒 / 促進酸化 / 反応場 |
研究概要 |
本研究では、水道水の快適性を損なうカルキ臭原因物質としてアンモニウムイオンに着目し、オゾン/触媒反応場を用いた除去の可能性について調査した。得られた知見を以下に述べる。まず、酸化白金、アルミナ、アルミナ担持触媒3 種、ZSM-5 についてオゾン/触媒処理を行うことによりその反応性を比較し、その反応について検討を行った。この結果、パラジウム/アルミナ触媒が最も効率が高く、さらにその反応はオゾンと触媒の相互作用によりヒドロキシルラジカルの生成が促進された結果であると推定した。また,酸化白金については触媒表面への吸着など別の相互作用も期待できることがわかった。次に,パラジウム/アルミナ触媒についてpH 5、pH 6、pH 7 それぞれについてアンモニア態窒素濃度が100 μg-N/L、500 μg-N/L、1000 μg-N/L となる条件でオゾン/触媒処理を行い、触媒の反応効率について論じたのち、得られた結果を用いてアンモニウムイオン除去量を注入オゾン量に対する関数として表した。これを用いてより低濃度域(50 μg-N/L、20 μg-N/L、10 μg-N/L) において、注入オゾン量に対するアンモニウムイオン除去量を推定し、より実条件に近い場合の反応効率を推定した。その結果、この反応はpH と初期アンモニウムイオン濃度に強く依存し、もっとも効率の高い結果となったpH 7、初期アンモニウムイオン濃度100 μg-N/L においても除去率は最大で51%であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り,触媒のスクリーニングを行い,触媒のタイプによってラジカルの生成に寄与するもの,触媒表面と対象物質自体が相互作用するものなどいくつかの機能を確認したため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,本研究では,水道水の安全性と快適性に大きく影響する原水中のアンモニア態窒素と有機態窒素を触媒反応を応用して高効率で除去する水処理プロセスを開発する。具体的には,オゾン+触媒型の促進酸化処理による低濃度域での窒素化合物の酸化に適した触媒(ゼオライトを基本骨格とし,金属酸化物を担持したもの)を探索・合成し,これらの制御法を確立する。これにより,塩素消費(快適性および消毒副生成物に影響),カルキ臭(快適性),消毒副生成物(特に窒素を含むもの),難分解性微量汚染物質といったこれまでの浄水処理プロセスの課題を,現行の高度浄水処理プロセスの利点を活かしつつ,解決するシステムを提案する。本研究の具体的な目的は以下のようになるが,特に24年度は触媒の効率化と反応生成物の検討を中心に実験的検討を進める。目的1:本申請で提案するオゾンと触媒を組み合わせた窒素化合物の酸化に有利な反応場を構築するために,最適な触媒を探索し,この酸化処理プロセスが有機態窒素とアンモニウムイオンについて浄水処理で対象となる濃度範囲で適用可能であることを示すこと。目的2:上記目的1の触媒利用型酸化処理プロセスが,原水中の窒素化合物に加えて,微量汚染物質・消毒副生成物(臭素酸イオン,トリハロメタン・ハロ酢酸生成能,NDMA等窒素系消毒副生成物)制御の観点からも優れていることを示すこと。目的3:触媒利用型酸化処理プロセスとその他の酸化プロセスの組み合わせ,例えばオゾン/過酸化水素型の促進酸化処理による前処理(アンモニウムイオンまでの酸化)との組み合わせによるプロセスの最適化について検討すること。
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次年度の研究費の使用計画 |
消毒副生成物の評価:平成23 年度の検討において,優れた処理特性を示した触媒については,処理水に塩素処理を行った上で,オゾン処理+塩素処理に比べて,消毒副生成物が実際に低減されていることを確認する。化学分析に消耗品を購入する。触媒のキャラクタリゼーションと最適化:一連の評価試験に用いた触媒の構造に関連する情報も収集する。基本構造,組成はそれぞれ,現有のX 線回折(XRD)とICP-MS にて行なう。この結果をもとに,予想された最適条件で触媒の合成を行い,本酸化処理システムの最適化を図る。昨年度一部市販品を用いたため,繰り越しが発生したがこの分は今年度の合成の費用に充当する。処理水中溶存有機物の特性解析:処理水中の溶存有機物の構成について分画手法により特性把握を行い,オゾン単独処理と比較し,溶存存有機物全体に対する処理性評価を行う。試薬等消耗品が必要となる。
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